競楽XIII本選出場者紹介〜土橋庸人(ギター)

▼本選演奏曲
高橋 悠治/メタテーゼ第2番 (1968)
Claude VIVIER/Pour guitare(1975)

この度はこのような素晴らしい舞台に立たせていただける事を大変うれしく思っております。
1曲目は高橋悠治作曲《メタテーゼ第2番》(1968)を演奏いたします。メタテーゼとは音位転換の意味で、弛まなく変化する音たちは感情が入り込むすきがないほど純粋な世界を構築しています。なんの匂いもない、といってもいいかもしれませんが、この真っすぐな曲に強く惹かれます。半世紀前の作品ながら1つのギター音楽の到達点です。
2曲目はC.ヴィヴィエ作曲《Pour guitare(ギターの為に)》(1975)です。バリのガムランの模した響きが特徴的で、前曲と全く違った意味をもつ空白を聴いていただけたら幸いです。

◎プロフィール
これまでにギターを松居孝行、佐藤紀雄、D.ゲーリッツの各氏に師事。エリザベト音楽大学卒業。ベルリン国立音楽大学ハンス・アイスラー大学院修了。リリエンフェルト(オーストリア)の音楽祭に招待、日独センター(ドイツ)にて内倉ひとみの個展にて、久保摩耶子のパフォーマンスと共演、ドイツ文化センターにてクリスティーネ・イヴァノヴィッチによるエーリッヒ・フリートの「イザナギとイザナミ」の講演に出演。また「秋吉台の夏2015」にて、山田岳 ギター・ポートレイトコンサートにて「コードウェルの為の祝砲」で共演し好評を博す。第一回パン・パシフィック現代音楽コンクール アンサンブルの部第一位。ウィーン・ギターフォーラム現代音楽賞を受賞。

▼予選演奏曲
Elliott CARTER/CHANGES(1983)

競楽XIII本選出場者紹介〜上路実早生(ピアノ)

▼本選演奏曲
藤倉 大/Etude II “Deepended Arc”(1998)
鈴木 純明/白蛇、境界をわたる(2008)

6年前に初めて競楽に足を運び、今まで聴衆の立場としてこのコンクールを楽しんでおりました。今回初めて出場者として参加し、本選での演奏の機会を頂けたことを、心より嬉しく思っております。
最初に演奏する藤倉大氏の作品は、自然倍音列が幾度となく現れ、響きがドラマティックに拡大していく作品です。
続いて演奏する鈴木純明氏の作品は、蛇の姿を模したツィルクラツィオのフィグールが特徴的で、また随所にベートーヴェンのピアノソナタのフレーズが引用されます。
演奏という行為は、クラシック音楽においてはしばしば「再現芸術」と見做されますが、私は、その作品の本質を見極め、それに向き合うことが最も重要な事だと考えております。単なる楽譜の「再現」にととまらず、作品が持っている魅力を最大限に引き出すことができるよう臨みたいと思います。

◎プロフィール
昭和音学大学、及び同大学院を学長賞を得て修了。これまでに小山田祥子、添田哲平、西川美知子、白石光隆、中川賢一、菊地裕介、松岡淳、江口文子の各氏に師事。第34回ピティナ・ピアノコンペティションG級全国決勝大会入選。第27回大曲新人音楽祭コンクールピアノ部門最優秀賞受賞。近年は、有田正広氏による公開講座でのデモ演奏などを務める。現在、昭和音楽大学伴奏研究員。

▼予選演奏曲
Tristan MURAIL/La mandragore(1993)

競楽XIII本選出場者紹介〜佐古季暢子(マンドリン)

▼本選演奏曲
近藤 譲/早春に(1993)
野田 雅巳/旋回アレグレット(2005)

皆さま、はじめまして。
マンドリンの出場者は2人目になります。この楽器の現代作品のレパートリーは少なく、マンドリンがまだ可能性のある楽器だと知られる機会も多くありません。ですので、マンドリンだけではない、様々な楽器が集う競楽の本選の場で演奏できるチャンスをいただけた事は、とても有難く嬉しいです。
本選の演奏作品は、2曲とも恩師による委嘱作です。
近藤譲作曲の《早春に》は、いわゆるマンドリン定番のトレモロ奏法を一切使わず、単打音のみで奏されます。関連のない音の連続のように聴こえますが、オクターヴを基に構成されており、その中から見出だされた旋律は浮かび上がっては消えていきます。同時に音色の重なりが多彩です。
野田雅巳作曲の《旋回アレグレット》はその名の通り円環運動のモチーフが連続し、円が膨らんだり萎んだり飛んでいったりと、エネルギーを感じる作品です。
マンドリンという楽器のもつ多様な響きと表現をお楽しみいただけましたら幸いです。

◎プロフィール
広島出身。エリザベト音楽大学マンドリン専攻第1期生として卒業。同大学院修了、渡独。中村音楽奨学生に選出される。ケルン音楽舞踊大学ヴッパータル校修士課程マンドリン・ソロ科修了。これまで川口雅行、C.リヒテンベルク、A.ヒンシェ、J.M.delカンポ、S.リスコの各氏に師事。現在、エリザベト音楽大学マンドリン科非常勤講師。

▼予選演奏曲
Kareem ROUSTOM/Ḥanjale for solo mandolin(2013)

競楽XIII本選出場者紹介〜山本昌史(コントラバス)

▼本選演奏曲
松平 頼曉/Replacement for Contrabass(1987)
Giorgi MAKHOSHVILI/REGREPS(2014)

四年前、初めて競楽の本選会を聞いた時の衝撃は今でも忘れられません。この度、その本選会に出場することが叶い、大変光栄に思います。
一曲目の松平頼曉作曲《Replacement》は、最初に提示された7つの奏法が、1234567、1357642、1562473…と、規則的に入れ替わりながら、音価が長くなったり、音程が変化していきます。音単体の持つ面白さが随所に感じられる曲となっています。
二曲目はジョージア(グルジア)生まれの作曲家、コントラバス奏者Giorgi MAKHOSHVILIによる《REGREPS》を演奏します。短いイントロを伴う三部構成となっており、最初と最後の部分は複雑な拍子が絡み合うダンスミュージックのような特徴があります。
全く性格の異なるこの二曲ですが、それぞれの作品を真に捉え、コントラバスという楽器が持つ魅力を充分に伝えるべく、今の自分に出来ることを精一杯発揮したいと思います。

◎プロフィール
静岡県小笠郡大須賀町(現掛川市)出身、大学進学を機に上京。在学中よりエレキベーシストとして活動し、卒業後よりコントラバスを始める。これまでにコントラバスを山本修、吉野弘志の両氏に師事。東京芸術大学別科修了。

▼予選演奏曲
Luciano BERIO/Psy per contrabasso solo(1989)
Teppo HAUTA-AHO/KADENZA(1985)

競楽XIII本選出場者紹介〜白小路紗季(ヴァイオリン)

▼本選演奏曲
Jörg WIDMANN/Étude VI  “Lullaby for Salome”(2010)

競楽の本選会で演奏させて頂ける事、とても嬉しく思っています。
クラリネット奏者であるJörg WIDMANNの楽曲の多くはユーモアに溢れていて、譜面には所狭しと奏法や音楽的な指示が書き込まれています。
この度演奏させていただく《Étude VI(エチュード6番)“Lullaby for Salome”》は、主題と24個のバリエーション、エピローグから成っており、キーワードは『子守唄』『オルゴール』『赤ちゃん』。WIDMANNの姪の名前から『サロメのための子守唄』と題されたこの曲は、幼い子どもの夢の中で起こっている出来事のような、幻想的な15分間の変奏曲です。
オルゴールのネジを巻く、赤ちゃんが目を覚ます、といった場面も奏者が演奏中にできる事を最大限に生かして表現を可能にしています。
会場の皆様に楽しんで頂けるような時間になれば幸いです。

◎プロフィール
桐朋女子高等学校、東京藝術大学卒業。メニューイン国際ヴァイオリンコンクールジュニア部門入賞後、ABC新人オーディションに合格。Delirium Ensembleのヴァイオリン兼ヴィオラ奏者としてCaspar Johannes Walterを始め数多くの作曲家の作品を『ワルシャワの秋』音楽祭等で初演。べルン芸術大学特別修士課程現代音楽科在籍。石川誠子、原田幸一郎、神谷美千子、漆原朝子、Tianwa Yang、Jörg-Wolfgang Jahnの各氏に師事。

▼予選演奏曲
西村 朗/ヴァイオリン独奏のためのモノローグ(1995)
Jörg WIDMANN/Étude Ⅲ(2003)