フォーラム・コンサート第1夜 (11月27日)  出品作曲家プログラム・ノート

フォーラム・コンサート第1夜 (11月27日)  出品作曲家プログラム・ノート

フォーラム・コンサート出品作のプログラム・ノートを先行公開します。
作曲者によっては追加メッセージもあります。

「作品について」をお読みになると、聴く前から曲のイメージが膨らむのでは?
11月27日には、これらのメッセージが実際にどのように音像化されているかを確かめに、
是非とも東京オペラシティリサイタルホールまで足をお運びください‼

①  近藤浩平
ピアノソナタ第3番「アメリカの爆弾」作品236
(作曲2025年 初演)

第1楽章 可部から中島本町に行くんよね
第2楽章 誰の爆弾じゃろ
第3楽章 次はどこ行くんね

◎作品について
原爆関連の音楽は、被爆の描写で怖い音にしてしまいがちですが、この作品は、日常の広島弁の会話が進んでいく中で、原爆によって失われた人達の声、あったはずの人生が示唆されます。全楽章、広島弁の弾き語りになっています。
ヤナーチェクがモラヴィアのしゃべるリズム、抑揚で音楽をつくったように、この曲ではピアノだけが演奏する部分も含めて広島弁で音楽ができています。
広島弁を懐かしく聴きつつも、原爆によって失われたかけがえのないもの、おらんようになってしまった人達の生前の語りかける声が思い出されるような音楽になっています。
原爆で「おらんようになった人」が生きて暮して誰かに待たれていた人、誰かを待っていた人、一人一人の普通の街の人々であることを思いおこさせる音楽です。

プロフィール
ベルリン・ドイツ・オペラ<Klang der Welt Ostasien>作曲コンクール第2位(室内楽)。左手のためのピアノ作品は舘野泉氏、智内威雄氏をはじめ演奏機会が多い。震災の追悼作品「海辺の祈り」は世界各地で再演200回を越える。ギター、ピアノ、ヴィブラフォン、マリンバの協奏曲も発表。映画「にしきたショパン」でマドリード国際映画祭最優秀作曲賞。2026年東京国際ギターコンクール本選課題曲を作曲。http://koheikondo.com

 

②  中辻小百合
Node for Violin and Marimba
(作曲2025年 初演)

◎作品について
 タイトルは「結び目、縁、絡まり、接点、交点」等の意味を持つ。2人の奏者が、強固な結びつきを持って支え合ったり、時には互いが様子をうかがい合ったり、バラバラになったり、対峙し合ったり、といった様々なイメージを膨らませながら曲を展開させていった。また、2つの楽器の組み合わせから生まれる音色対比を、時には際立たせ、時にはうまくつなぎ合わせることを意識しながら作曲を進めていった。
 最後に、ご来場くださった会場の皆様、演奏してくださる佐藤まどか先生、若﨑そら様、運営の諸先生方、事務局の皆様に心より深く感謝申し上げます。

プロフィール
国立音楽大学作曲学科を経て、同大学院修士課程を首席で修了、併せて同大学院研究奨学金授与。同大学院博士後期課程創作研究領域修了。博士(音楽)。第78回日本音楽コンクール作曲部門第1位受賞、併せて岩谷賞(聴衆賞)および明治安田賞受賞。主な作品に、《消えていくオブジェ》(日本音楽コンクール第1位受賞作品)、《The Divided Self for Percussion and Orchestra》(国立音楽大学2010年度委嘱作品)、《The Smokers for Percussion Ensemble》(同2020年度委嘱作品)など。これまでに作曲をトーマス・マイヤー=F、福士則夫、北爪道夫の各氏に師事。現在、国立音楽大学講師。日本現代音楽協会、日本作曲家協議会、各会員。

 

③  ロクリアン正岡

南無阿弥陀仏No.2「ああ、極楽浄土」
ーテノールとクラリネット、バイオリン、チェロ、ピアノによる

(作曲2008年 改題初演2025年)

◎作品について
「自分の生はこの世だけのもので、以前も以後も完全な無だ」とはばかげた認識だと私は思う。大谷翔平の優秀さはこの世の生一発で実現するものではなく、いくつもの生を重ね磨かれてきたものだろう。

しかし私は輪廻転生も避けたい。たとえ次の生がこの世の自分よりも増しであるとしても、浄土行きこそ願いたいものである。そういえばクラシック音楽の最上級のものに聴き入っていると、題名や表現内容はどうであれ浄土の雰囲気がひしひしと感じられる。
浄土宗の法然や浄土真宗の親鸞は「南無阿弥陀仏/なむあみだぶつ」を信じて日々唱え続けることで凡夫も極楽浄土に迎えられると主張し、さらに親鸞は南無阿弥陀仏の本願力を他力としていただけばよい、とした。
藝術や文化にはいろいろなメディアがあるが、媒体としての音楽はまさに字の通り空っぽの子宮のようなもの。まずは作曲時の脳のあり様だが、諸力犇めき合う想念をも相殺させ如来のような穏やかな表情が楽曲に与えられるにはその空性/他力に与るほかない。
“元来が優しさに満ちた音楽”というものは浄土からの贈り物でなければ!私はこの音楽が彫刻ではなく仏像であることを願った。仏こそ浄土の主なのだから。
 しかるに音楽は楽曲だけでは成り立たない。この楽曲にふさわしい音響の外化とは?はたまた聴取とは?
 そして「極楽浄土」に於ける存在感覚とは?
(この楽曲の具体的な拍節構造や音素材、さらに存在論的意義についてはロクリアン正岡のHPにあります。)

◎追加アピール文
自分の死後は?
意識するしないにかかわらず、これは万人にとって切実な問題ではなかろうか。

強い信仰心で日々「南無阿弥陀仏/なむあみだぶつ」と唱えれば極楽浄土に行ける、とは浄土真宗の教祖、親鸞の教えである。己にとって「他力」である阿弥陀仏の本願力に与れ、と。
一方、音楽のメディア面の本質は限りない優しさ、限りない平和性だと思う。あの激しく奇抜な音楽で知られる作曲家ストラヴィンスキーも「そもそも音楽の雰囲気は女性的なものである」と言っている。

私は「南無阿弥陀仏」という志向原理/テーゼを得て、徹底的に「他力」に与ろうとした。常に未来から注ぎ込まれてくる良い風/楽音は聴く者にとって「他力」そのものだろう。
そうやって実現するあらゆる対立のないありよう。主体と客体の間にも、過去と未来の間にも、身と環境の間にも融和以外の何物もなく、ただただ健やかで気持ちの良い状態こそ、メディアとしての音楽の本然ではないだろうか。

 抽象的な話になってしまったが、幸いなことに“そのような状態”は生きとし生けるものすべての中にある。睡眠の快さ、母胎のなかの胎児の実感。
ただし、その奥には生死を超えた”大いなる領域“が厳然と存在しているに違いない。それこそ音楽メディアに担ってもらうべき第一義的なもの“浄土”ではなかろうか?(クラシック音楽の名曲には浄土を感じさせるところが少なくない。)
そのような想念の中、なぜか十一面観音が頭に浮かび「なむあみだぶつ」の七拍子との関係で7拍子と4拍子の二小節一組がこの楽曲の基本細胞として繰り返されることになった。

 使われている音はただ一種類の全音階七音(残る五音は全く参加せず)だが、この凸凹した拍節の障壁を無事に搔い潜ることで、この音楽は力強く自己形成してゆくのであった。

 ああ、極楽浄土                       2025.11.03 ロクリアン正岡 

 

④  植野洋美
地球温暖化と私たちーピアノソロのための
(作曲2025年 初演)

◎作品について
地球温暖化により私達を取り巻く環境は年々深刻化している。現代の豊かな暮らしが、その代償として次世代の人々にどのような劣悪な環境を残すことになるのか。いや、既に今の私達でさえ耐え難い猛暑、台風、大雨、大雪などといった過酷な気候変動に見舞われており、今後さらなる大禍となる。今や後戻りできないギリギリのラインだ。この作品では情景描写や現象説明ではなく、現象に対する作曲者の印象や内面に潜む感情を表現した。私たち一人ひとりに何ができるのか良く考えたい。

プロフィール
作曲で神戸女学院大学卒業、大阪音楽大学大学院修了、東京藝術大学大学院修了。音楽学でエリザベト音楽大学大学院博士課程修了、Ph.D.。神戸女学院大学音楽学部最優秀者クラブファンタジー賞、吹田音楽コンクール作曲部門1位、大阪音楽大学コンクール奨励賞、エリザベト音楽大学学長表彰、他受賞。国際ピアノデュオコンクール作曲部門、現音新人賞、他入選。フェリス女学院大学、エリザベト音楽大学他で作曲指導、東京かつしか作曲コンクール会長・審査委員長を務めた後、現在Coily合同会社代表、植野音楽塾塾長として後進の音楽教育と普及に注力。腱鞘炎予防のピアノ打鍵研究を行い、IEEE(米国電気学会)やISPS(国際演奏科学シンポジウム)、日本音響学会など国内外の学会にて研究発表。日本現代音楽協会、日本作曲家協議会、日本音響学会、IEEE他会員。若手5人と作曲家グループbébébaleineM結成、2026年10月22日(木)カメリアホールにて演奏会予定。

 

⑤  浅野藤也
弦楽四重奏のための音楽
(作曲2025年 初演)

◎作品について
4つの楽器のそれぞれの旋律が多様性を保ちながら対立することなく、お互いに寄り添って溶け合うようなイメージの音楽を目指した。

プロフィール
作曲を故浦田健次郎、ピアノを故庄子みどりの各氏に師事。2006年第17回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門入選、2008年第12回日本の音楽展•作曲賞入選、2009年第14回東京国際室内楽作曲コンクール第3位。2012年東アジアの現代音楽祭inヒロシマ、2014年東アジア音楽祭inヒロシマに参加。2020年2月OM-2公演舞台音楽を担当。

 

⑥  田中範康
森の静寂の中で
(作曲2025年 初演)

◎作品について
 私ごとだが、約20年前から毎月のように山梨県の清里高原を訪れている。
1980年代、駅前を中心に観光地化した街並みが、今ではその面影もなく、小海線の踏切を渡ると、そこには豊かな森が広がっている。
 清里の静かな森の中を歩いていると、標高1350mの高地であるせいなのだろうか喧騒とは程遠いい静寂の中に木々の様々なささやきが聞こえてくる。
本作品ではそんな森の中の空気感を、なるだけ素直に音にした作品である。
 ヴァイオリソロで開始する楽想と、途中で変化する少し早めのテンポの楽想が核となり全曲を構成している。

プロフィール
東京生まれ。国立音楽大学附属高校を経て、国立音楽大学作曲学科、並びに同大学器楽学科(オルガン専攻)卒業。昨品は、日本はもとよりドイツ、北欧、フランス、アメリカ、韓国、メキシコ、でのコンサート、音楽祭で広く紹介されている。 現在までに5枚の室内楽アルバムが、Vienna Modern Masters(VMM-2011 2036)や ALM RECORDS(ALCD-87, 103,136)でCDリリースされている。さらに、マザーアースより、室内楽作品の楽譜が出版されている。名古屋芸術大学並びに大学院で教授として長年の間後進の指導にあたった他、副学⻑、理事も務め、2024年3月に退職をした。 現在、愛知県文化振興事業団理事、日本現代音楽協会会員。

 

⑦  松岡みち子
見知らぬ国のうた
(作曲2025年 改作初演)

1.遠い遠い昔の時への望郷のうた
2.村祭り
3,子守唄

◎作品について
遠い遠いどこかの国には、口伝えで、昔から歌い継がれてきたうたがある。

その村の人なら、みんな誰でも知っているうた。それは、その土地にしかない独特なリズム、微妙な息遣い、歌い回しの音程の少し外れたような不思議な表情を持っている。

ずっと長い時の流れの中で受け継がれ、大事にしてきた村の宝物。

ふるさとの土の匂い、風の優しさ、水の輝き、あの丘に登って海から生まれる太陽を望む時の神聖な思い、お母さんの胸に抱かれた心地よさ、祭りの日にみんなで着飾って張り切って歌ううた・・・

そんな風変わりで、温かくて、懐かしい音楽を作ってみたいと思いました。

こんな曲に大胆にチャレンジをしてくださる小川明子さんに、心から感謝です。

プロフィール
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。デュッセルドルフ音楽大学留学。徳島県芸術祭最優秀賞受賞、東京国際室内楽作曲コンクール入賞、奏楽堂歌曲作曲コンクール入選。作品は日本の他、ヨーロッパ各地の音楽祭で演奏されている。「松岡貴史&みち子作品展」を東京、徳島、ハンブルグで9回開催。徳島文理大学講師、香川大学特命准教授、鳴門教育大学講師。徳島県立名西高校講師を歴任。日本作曲家協議会、日本現代音楽協会会員。

公式HP  作曲家 松岡貴史・松岡みち子の部屋 https://www.takashimichiko.com

 

⑧  河野敦朗
September
(作曲2025年 初演)

◎作品について
あらゆることを遮ることでそれ自体が成立するような、いくつかのモチーフを設定し、それらが、あらゆる物質や事態を含みながらそれ自体の質において発展し、生成と消滅を繰り返し、明滅しながら、様々な事態を形作っていく事を目指している。作品の初演に協力いただいたピアノの石山聡氏に、心から感謝いたします。

プロフィール
東京生まれ。東京芸術大学作曲科卒業。在学中より学外に作品を発表し、卒業と同時に発表した作品が朝日新聞・音楽誌等で好評を得てデビューとなる。その後日本現代音楽協会などで作品を発表する。ISCM国内選考作品「5人の奏者による小空間のための試み」、合唱曲「BLUE」(音楽之友社 出版)。大分県立芸術文化短大名誉教授。日本現代音楽協会、日本作曲家協議会所属。高槻音楽家協会会長。高槻市在住。

 

⑨  横山真男
黄金比調弦によるヴィオラ・チェロ・コントラバスのための三重奏曲
(作曲2025年 初演)

◎作品について
新しいハーモニーを提案するという研究的・実験的な意図で、黄金比で計算されたピッチで調弦された弦楽曲。通常の西洋音楽における音律(ドレミ)は、基となるなるピッチに3を掛けて生成されている。そのため整数比の倍音列なので心地よく響く。一方、この作品においては、その整数比3ではなく黄金比(約1.618)で順次音階を計算して導出しているので、どの音程も不協和音程となる。この音列生成システムの詳細は作者のHPや論文などで説明しているが、つまるところ各弦楽器奏者は開放弦をスマホアプリなどで指定の黄金比ピッチで調弦し、構成している音はすべて開放弦と自然ハーモニクスのみである(黄金比の音程は指で押さえて取ることはできないので)。
なお、黄金比というとその導出アルゴリズムとしてフィボナッチ数列が知られている。曲の長さや音価、テンポはこの数列の数値を用いており、さらに、コンピュータプログラムを用いて自動生成している楽章もある。ただし、自動的に出力された音を並べるだけでは面白くないのでアーティキュレーションや強弱は人間の手によって味付けをしている。
以上の説明だと、なんとも小難しい話ばかりではあるが、慣れてくると意外と聞くに堪えられない不協和な音楽ではないかもしれない。
曲は性格の異なる全8つからなるバガテル風。共通のA音で始まり、徐々に速く激しくなって頂点に達したところが黄金比による大きな分割点である。最後は水琴窟の中のような幻想的な終曲。

プロフィール
https://www.jscm.net/yokoyama_masao/

フォーラム・コンサート第2夜 (11月28日)  出品作曲家プログラム・ノート

フォーラム・コンサート第2夜 (11月28日)  出品作曲家プログラム・ノート

フォーラム・コンサート出品作のプログラム・ノートを先行公開します。
作曲者によっては追加メッセージもあります。

「作品について」をお読みになると、聴く前から曲のイメージが膨らむのでは?
11月28日には、これらのメッセージが実際にどのように音像化されているかを確かめに、
是非とも東京オペラシティリサイタルホールまで足をお運びください‼

①  くりもとようこ
臆病な自尊心と尊大な羞恥心

(作曲2025年 初演)

◎作品について
 2025年に作曲、10月に名古屋にて初演された。
 題名は、中島敦の小説「山月記」の中に出て来る言葉である。「山月記」とは、大成しなかった詩人が挫折し、発狂して虎になってしまい、山中で然出会った昔の知人に、人間性を無くしてしまう前に、自作の詩数十篇を残して欲しいと依頼する。そして、非常に自嘲的に自己分析をする。自分がこうなってしまったのは「臓病な自尊心と尊大な差恥心」のせいである、と。
 高校の国話の教科によく載っているというこの小説だが、若い人が挫折について学ぶことは良しとしても、現在、我が身に置き換えて読むと、身につまされて、辛い。
 「山月記」を発表したその年に33歳で亡くなってしまった作者は、主人公に自分を重ねていたのだろうか。
 曲は、この作品を表現しようとした訳ではない。作曲に当たって、この2つの言葉から「ズレ」というものを考えた。2本のチェロは、音程・リズム・音色の僅かなズレを持ってシンクロナイズする。

プロフィール
愛知県立芸術大学及び大学院修了。作曲・演奏・パフォーマンスをする。主要作品として、《発声と様式のモード〜新しいオペラへの試み》、名フィルより委嘱された《弦楽器、打楽器、ピアノと和太鼓のための「天・無・極」》等がある。2014年、現代日本の作曲家シリーズ第47集としてCD『くりもとようこ自作自演集』がフォンテックよりリリース。1992年度名古屋市芸術奨励賞受賞。現在、日本現代音楽協会、日本作曲家協議会各会員。

 

②  堀切幹夫
From Winter to Summer
(作曲2014年 初演)

◎作品について
冬から春を経て夏へのクレッシェンド。
曲は〈2月〉〈3月〉〈4月〉〈5月・夏〉の4分ずつの、緩急緩急の4楽章構成。各楽章は、アタッカで続けて演奏される。季節の時間の移り変りと、音楽時間の推移の反映。音楽が自然界の造形にまで高まっていれば、幸いである。
〈2月〉——ウィンターミュージック。特殊奏法もまじえて、荒涼とした冬のきびしい風景。
〈3月〉——ピッチカートを主体としたリズミックな楽章。春を待ちわびるうきうきした様子。楽しい冬から春にかけての期待にみちた風情。雛祭なんかもある。3月下旬、雪にみまわれる。それが終ると、鳥がなき、春到来の4月へ移って行く。
〈4月〉——春たけなわである。ふっくらとした弦の静的であたたかい和音が主体的。あたたかい風の中に花々がゆれる。まさに春はこの世の逸楽。盛り上がって行き、いよいよクライマックスである初夏をむかえるのだ。
〈5月・夏〉——この楽章では、自然界の時間の推移より、純音楽的なフィナーレとしての時間構造
の方が優位にたったかも知れない。アップテンポで夏を謳歌している。曲は中間部をはさんで、いよいよ輝きに満ちたものとなり、完成は8月。冬から夏への一つの季節の時間をかりた。僕なりの純音楽的楽曲となった。

プロフィール
1953年、東京生れ。1968年、清瀬保二に師事。1978年、病のため東京藝大中退。

 

③  三宅康弘
らんちう狂詩曲ーヴァイオリン独奏のための
(作曲2025年 初演)

◎作品について
らんちう(らんちゅう)とは、150年前に日本で生まれた金魚の一品種です。背びれがなく平らで、卵形の太い胴と、頭部の大きなこぶが特長で、「金魚の王様」とも呼ばれています。

そもそも魚として速く泳ぐために必要な背びれが消失し、尾が張り出し、他のひれも小さく、非常に泳ぎにくい体型をしているにも関わらず、泳ぎの上手さも求められるという矛盾を抱えています。人間による品種改良で相撲の力士のような堂々とした風格を持ち、もはや自然界では自力で生きられないほど特異な姿に進化しているのですが、金魚が2000年前に中国で突然変異で赤くなった緋鮒を祖先に持つため、自然交配に任せているともともとの鮒の形に戻っていくそうです。
そんならんちうの独特な性質を、音楽的に翻訳する形で作曲しました。
卓越した演奏家である佐藤まどかさんには、数々の助言をいただきましたこと、この場をお借りして感謝申し上げます。

プロフィール
国立音楽大学応用演奏学科卒業(第1期生)、同大学院作曲(音楽理論)専攻修士課程修了。同大学国内外派遣奨学生(ザルツブルグ・モーツァルテウム音楽院国際夏期セミナー)、現音作曲新人賞受賞(2002年)、ISCM(国際現代音楽協会)世界音楽の日々エストニア大会入選(2019年)。
現在、上野学園短期大学音楽科准教授、洗足学園音楽大学・大学院非常勤講師、聖徳大学音楽学部兼任講師。日本現代音楽協会会員、日本ソルフェージュ研究協議会会員、日本電子キーボード音楽学会幹事。

 

④  早川和子
道(どう)~独奏チェロのための~
(作曲2025年 初演)

◎作品について
「道」(どう・みち)とは、“人が往来するところ”、“人の守るべき物事の道筋”、“方法・やり方”、“依る・依り従う”、“手引・案内”、“教え”、“もろもろの学間・技芸”など字義は多岐にわたる。
 人が日々往来する道。それは広かったり、狭かったり、まっすぐだったり、曲がっていたり。時には行き止まりで引き返さねばならなかったり。平坦かと思えば坂道、それも急で長い長い坂道。でこぼこ舗装されているようないないような。じゃり通、泥道、廻り道。とてもお気に入りの靴では歩けないような現実そのものがそこに存在していたり……。単なる道かと思えばそれは人生そのものであったり……。苦労した方が味がある、などと励まされ作曲人生早や50年強。
 本作品、ハイポジション、ダブルストップ(二重音)、フラジオレット、ピッチカート等チェロの演奏技法を駆使し、様々な道の姿を表現している。
 難解な曲に挑んで下さる高名かつ誠実な人柄の苅田雅治さんの実力と意欲に感謝!!!

プロフィール
1975年東京藝術大学大学院音楽研究科修了、芸術学修士。作曲を長谷川良夫に師事。現在までに個展を21回開催。このうち第3回より第21回までは全作品初演。また1997~2002年の個展は「演奏会形式オペラ」による。作曲グループ「屮」代表。1997、1999~2004年度日本現代音楽協会委員(2003年度以降は理事と改称)。茨城大学名誉教授。

 

⑤  河内琢夫
<ニライカナイ民族組曲)~メタル・ガムランとビアノのための
(作曲2023年)

◎作品について
タイトルにある「ニライカナイ」とは琉球、奄美群島に住む人々の間で信じられている異界概念、理想郷の一種で死後の楽園すなわち南方浄土のことである。そんな世界に住む人々の、現世での生きる苦悩から一切、解き放たれた安らぎと喜びに満ちた小さな祭りの音楽、架空の民族音楽を私はここで作りたかった。

実は今宵、使用されるメタル・ガムランは私が好奇心から通販で買い求めたもので、価格は1万円と少し。品物が届いて、この楽器は実際のガムラン演奏に使われるものではなく、いわば置き物、玩具、お土産品の一種だと気が付いた。楽器の価格を考えれば当然のことであろう。しかし、しばらく楽器をいじっているうちに、これは何か作れそうだ、という気になって作曲したのがこの作品である。メタル・ガムランの音はたった7つ。下からD♭-F-G♭-A♭-C-D♭-Fである。
曲は以下の3つの楽章から構成されている。
第一楽章:中庸の速さで
第二楽章:ゆっくりと
第三楽章:急速に

プロフィール
洗足学園大学音楽学部(現・洗足学園音楽大学)作曲専攻卒業後、同大学専攻科修了。作曲を宍戸睦郎氏に師事。第3回Music Today国際作曲コンクール(企画構成:武満徹)入選、ISCM World Music Days(ルーマニア)入選。エコ・アース・レコーズより3枚の作品集CDをリリース(販売元:東武商事)。日本現代音楽協会、日本作曲家協議会各会員、深新會同人、日本グリーグ協会役員。

 

⑥  露木正登
セレナードIII~バセットホルン、洞簫、笛子とピアノのための
(作曲2025年 初演)

◎作品について
2025年7月末から10月中旬にかけて作曲。2014年から始まったセレナード・シリーズの第3作。この曲はバセットホルンが中国の民族楽器(洞簫、笛子)と出会うというコンセプトで書かれた。

3部からなる6楽章構成。続けて演奏される第1楽章から第3楽章までが第1部、第4楽章と第5楽章が第2部、そして第6楽章が第3部となっている。楽器編成は楽章ごとに異なるが、バセットホルン、中国の民族楽器(洞簫または笛子)およびピアノが揃っての合奏は第3楽章と第5楽章(あと第6楽章の一部分)のみである。中国の民族楽器は、第1部と第3部では洞簫(F管)が、第2部では笛子(A管)が使用される。
中国の民族楽器については、それぞれの楽器がもつ音色や音域、性能を尊重しつつも、結局は私自身の音楽をその楽器に託すより他はなく、その意味では西洋近代楽器のために曲を書くのとまったく同じ姿勢で向き合うことにした。
拙作を演奏してくださる王明君さん、鈴木生子さん、及川夕美さんに心から感謝いたします。

プロフィール
作曲を浦田健次郎氏に師事。第6回朝日作曲賞(吹奏楽)受賞。第3回国立劇場作曲コンクール佳作。第12回吹田音楽コンクール作曲部門第3位入賞。《交響的譚詩(1995)》と《「かごめかごめ」の主題による幻想曲(2005)》の2つの吹奏楽作品がティーダ出版から、《トリプティーク~サクソフォン四重奏のための(2015)》がブレーン(株)から出版されている。

 

⑦  桃井千津子
The Lion’s Share~ソプラノとビアノのための
(作曲2025年 初演)

◎作品について
本作品は「確かに貸した」の回文が旋律の抑揚となる前奏から始まる現代日本歌曲である。10年前の英語回文を使用した作品は、逆行の認識が難しく、その改善作ともいえる。英単語や謎言語は、この曲の録音逆再生でも歌曲として聴くことができる、作曲者の編成であるものの、音質が悪くなるため今回は逆再生なしとした(回文含め、謎歌詞は現音ネットサイト上に掲載)。
歌詞全体に一貫性はなく、旋律や使用音階も数秒で変移する。超小品集的な曲として現在におけるネット情報のスピード感、短縮感を表した。
最初はリディア旋法の第1音変位とローテーション、伴奏や歌、舞台上の変化が顕著になる中間部は五音音階系、再現部は提示部分の逆行が主に使用される。反復進行などの旋律や和声感は面白い歌詞に基づいている。
「だんだん」という言葉の箇所は松任谷由実「DANG DANG」の旋律一部引用であり、本格的に作曲を学ぶ事を勧めてくれた、今は亡き歌専攻の先輩へのオマージュとした。
演奏を引き受けてくださった川辺茜さん、長井進之介さんに感謝し、ご来場の方々、諸先生方、視聴してくださる皆様にも心より御礼申し上げます。

プロフィール
国立音楽大学卒業、同大学大学院修士課程(音楽理論)修了、博士後期課程満期退学。渡米中にアレンジ法、パフォーマンス法、音楽理論を学ぶ。帰国後は作曲や作品研究、教育活動と旋法の研究、「20世紀音楽を分析する」共著書籍出版等。日本現代音楽協会、日本音楽学会、日本音楽表現学会各会員。

追加アピール文
「The lion’s share」は全体の大部分、ライオンの美味しい所取り的な寓話の教訓という意味から録音逆再生の場合も歌詞と音楽が回文で楽しめる構成です。日本語と英語の回文ほか、中間部以外に使用された謎言語も⇩注目いただけますと幸いです。

A-ti-sa-ki-na-ki-sat. I-na-wo-ti-ro-to-ko-ti-ro-ta-win. A-nus-ta-me-da-mu-tan. A-ma-ma-ga-wa-ti-si-ni-sa-ta-wa-ga-mam.「Aha!」留守に何する? U-ru-si-na-ni-nu-sur? 狐 鐘つき。Ki-ku-ste-na-ke-nus-tik.「Huh?」鯛焼き焼いた。A-ti-a-yi-ka-yi-at. いぶし銀 演技すごい。I-u-bu-signe-ni-gi-sub-I 「Wow!」カッコいい国歌。Ak-ko-ki-iok-ka-k. まさか逆さま。A-ma-sa-ka-sa-ka-sam. 「Gag?!」

相談とは とんだ嘘、O-su-ad-no-ta-wot-naduos. O-yo-na-na-ke-na-koa-koa-ke-na-ka-no-noy. 世の中ね 顔かお金かなのよ。「Borrow or rob?」Fall leaves after leaves fall. The lion’s share.

 

⑧  松波匠太郎
乱声和同美武府~Run”Joiedevivre”
(作曲2025年 初演)

◎作品について

乱声和同美武府(らんじょうの わどう びの ぶふ)はフルートと三味線のための二重奏であり、雅楽・舞楽の中で聴かれる「乱声」より着想を得た作品である。舞人が舞台に登場する際に奏される、笛や太鼓、鉦鼓による前奏・導入曲で、自身は春日大社における「遷幸の儀」の中で行われるそれを映像で視聴し、そのポリフォニーや微分音にすっかり魅了されてしまった。簡単に説明すると、数名の龍笛奏者が列をなし各々のパートを奏し、神様を先導するのである。ポリフォニーの実現は大編成の機会にとっておくこととし、今回は微分音の要素にフォーカス、技の多彩さが魅力の二楽器による形態とした。

その後、乱声=run〜と掛けallegroの音楽はどうかと、続けてjo…joie de vivre”生きる喜び”に辿り着き、三味線ならば歌舞伎的にと、冒頭の当て字及びコンセプトが確定する。和同は調和、武府は江戸の異称であるため、三味線を使用する作品としてうまくまとまった気でいるが、音楽は果たして…。
曲は単一楽章で前奏曲的性格を持ち、それぞれの楽器がソロとしても成立し得るヴィルトゥオーソを担い、協働と拮抗を繰り返す。ゆらぎ(ポルタメント)のテーマと上行型の走句が全体を支配するが、フルートの息遣いや三味線の端唄あたりから、”人間”を感じられれば嬉しい。世界的アーティストである本條秀慈郎氏と、期待の若手である尾藤あづみ氏、二人の奏者(走者)のパフォーマンスを楽しみにすると共に、この場を借り心より御礼を申し上げます。
 
プロフィール
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院修了。在学中、同声会賞受賞。第82回日本音楽コンクール作曲部門第二位、岩谷賞受賞。第8回JFC作曲賞。作曲を小山薫、浦田健次郎、川井學、土田英介の各氏に、常磐津節を常磐津文字兵衛氏に師事。名古屋音楽大学特任准教授、桐朋学園大学、エリザベト音楽大学非常勤講師。日本作曲家協議会理事、日本現代音楽協会、オーケストラ・プロジェクト各会員。

〈現音 Music of Our Time 2025〉開催!コンサート、コンクール、レクチャー、ノーノの日本初演作品も上演!!

 

●サテライト企画
レクチャーSeries 新しい創造の扉
生成AIとの共存に向けて

2025年1012日(日)11:30開場 12:00開演
会場:洗足学園音楽大学 アンサンブルシティ棟C301教室

●12:00〜口頭発表・事例報告
●14:30〜シンポジウム

【出演】 音声合成研究:嵯峨山茂樹 作編曲家:小川類
クリエイター:太田雅友 AI研究:大谷紀子・安藤大地
音楽プロデューサー:白柳龍一 建築家:黒木正郎
法律家:張睿暎 進行:松尾祐孝(日本現代音楽協会会員)

【共催】日本AI音楽学会

入場無料・要予約(配信無し)⇒ 開催前日までに 80th@jscm.net 宛にメールでご予約ください。関連資料を事前にメールでお送りする場合があります。

 

●サテライト企画
レクチャーSeries 新しい創造の扉
管弦楽スコアの読み解き方(続)

2025年111日(土)14:30開場 15:00開演
会場:洗足学園音楽大学 アンサンブルシティ棟C210教室

【出演】
山内雅弘(作曲家・日本現代音楽協会理事)
森垣桂一(作曲家・日本現代音楽協会理事)

日本現代音楽協会の作曲家・山内雅弘と森垣桂一が、クラシックや日本のオーケストラ作品を題材に、そのスコアから作品を読み解き、深掘りします。オーケストラ音楽や現代音楽に興味がある方、演奏に取り組んでいる方、作曲を志す学生など、どなたでもご参加可能です。

入場無料・要予約(配信無し)⇒ 開催前日までに 80th@jscm.net 宛にメールでご予約ください。関連資料を事前にメールでお送りする場合があります。

 

フォーラム・コンサート 第1夜
2025年1127日(木)18:15開場 18:30開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール

1.近藤浩平/ピアノソナタ第3番「アメリカの爆弾」作品236(作曲2024年)
清水友美(ピアノ弾き語り)

2.中辻小百合/新作(作曲2025年初演
佐藤まどか(ヴァイオリン)若﨑そら(マリンバ)

3.ロクリアン正岡/南無阿弥陀仏No.2「ああ、極楽浄土」—テノールとクラリネット、バイオリン、チェロ、ピアノによる(作曲2008年 改訂2025年改訂初演
平野太一朗(テノール)白小路紗季(ヴァイオリン)下島万乃(チェロ) 岩瀬龍太(クラリネット)川村恵里佳(ピアノ)

4.植野洋美/地球温暖化と私たち —ピアノのための(作曲2025年初演
植野洋美(ピアノ)

5.浅野藤也/弦楽四重奏のための音楽(作曲2025年初演
亀井庸州・加藤綾子(ヴァイオリン)甲斐史子(ヴィオラ)松本卓以(チェロ)

6.田中範康/森の静寂の中で(作曲2025年初演
佐藤まどか(ヴァイオリン)松山元(ピアノ)

7.松岡みち子/見知らぬ国のうた(作曲2023年 改訂2025年改訂初演
小川明子(アルト)

8.河野敦朗/新作(作曲2025年初演
石山聡(ピアノ)

9.横山真男/黄金比調弦によるヴィオラ・チェロ・コントラバスのための三重奏曲(作曲2025年初演
甲斐史子(ヴィオラ)北嶋愛季(チェロ)布施砂丘彦(コントラバス)

●座席券:4,000円ネットで購入
●インターネット視聴券:1,500円ネットで購入

 

フォーラム・コンサート 第2夜
2025年1128日(金)18:15開場 18:30開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール

1.くりもとようこ/臆病な自尊心と尊大な羞恥心(作曲2025年)
豊田庄吾・伊藤文嗣(チェロ)

2.堀切幹夫/From Winter to Summer(作曲2014年初演
カルテット・レオーネ:佐原敦子・小杉結(ヴァイオリン)阿部哲(ヴィオラ)豊田庄吾(チェロ)

3.三宅康弘/らんちう狂詩曲 —ヴァイオリン独奏のための(作曲2025年初演
佐藤まどか(ヴァイオリン)

4.早川和子/道 〜独奏チェロのための〜(作曲2025年初演
苅田雅治(チェロ)

5.河内琢夫/《ニライカナイ民族組曲》〜メタル・ガムランとピアノのための(作曲2023年)
町田志野(メタル・ガムラン)小笠原貞宗(ピアノ)

6.露木正登/セレナードIII 〜バセットホルン、洞簫、笛子とピアノのための(作曲2025年初演
鈴木生子(バセットホルン)王明君(洞簫/笛子)及川夕美(ピアノ)

7.桃井千津子/The Lion’s Share 〜ソプラノとピアノのための(作曲2025年初演
川辺茜(ソプラノ)長井進之介(ピアノ)

8.松波匠太郎/乱声和同美武府 ~Run “Joie de vivre”(作曲2025年初演
尾藤あづみ(フルート)本條秀慈郎(三味線)

●座席券:4,000円ネットで購入
●インターネット視聴券:1,500円ネットで購入

 

第42回現音作曲新人賞本選会/現音会員小個展〜伊藤彰
2025年123日(水)18:30開場 18:45開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール

▼第1部:現音作曲新人賞本選会 全曲2025年作曲初演

1984年創設。新人作曲家の音楽的発言を重視し、その道を開くための作曲賞。審査は「妥協のない厳選」という主旨から、日本現代音楽協会理事会が選ぶ審査員長と、審査員長が指名する2名の審査員によって行う。審査員長は将来にわたって再選されない。今回の募集テーマは「弦楽器および木管楽器を中心とした二重奏、または三重奏作品」。

1.上岡丈晃/Regeneration for Flute, Clarinet, and Viola

2.近持亮平/Share the Space for Saxophone and Contrabass

3.劉昊桐/Endless クラリネット、ヴァイオリン、ピアノのために

4.浦野真珠/ヴィーナス・フライトラップ-2人の弦楽器奏者とフルート奏者のための- [vn, va, fl]

【演奏】
木ノ脇道元(フルート)菊地秀夫(クラリネット)大石将紀(サクソフォン)篠田昌伸(ピアノ)甲斐史子(ヴァイオリン)安藤裕子(ヴィオラ)山本昌史(コントラバス)

【審査員】徳永崇(長)、河添達也渡辺俊哉


▼第2部:日本現代音楽協会会員による小個展〜伊藤彰 弦楽器による作品を集めて

1.Sempre Trattenuto(作曲2019年日本初演
2.⼣べにすべてを⾒とどけること(作曲2020年⽇本初演・舞台初演
3.弱い紐帯の強さ(作曲2022年)

【演奏】亀井庸州・白小路紗季(ヴァイオリン)甲斐史子(ヴィオラ)松本卓以(チェロ)

●座席一般券:3,000円 ⇒ ネットで購入
●座席学生券:1,500円 ⇒ ネットで購入(入場時要学生証)
●インターネット視聴券:1,500円 ⇒ ネットで購入

 

ペガサス・コンサート Series Vol.VII
(1)木ノ脇道元(フルート)
「どーげんをプロデュース」をプロデュース〜21世紀フルート音楽を俯瞰する

2025年128日(月)18:30開場 19:00開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール
 
※このコンサートはサントリー芸術財団佐治敬三賞推薦コンサートです。

「どーげんをプロデュース」と銘打った演奏会のシリーズを2021年から始め4回を数えた。「木ノ脇の独演」という前提で毎回企画者にプロデュースしてもらう。今回の演奏会は過去4回の中から木ノ脇自身が選曲して再構成する。企画者が「フルート独演」という形に対してそのたび違った個性の光を当てるという二重構造だったプログラムに、今度は木ノ脇自身の視座から「フルートの新しい響き」というテーマで光を当てる。さらに次回5回目のプロデューサー山本裕之の委嘱作品や、ポッペの仕事と響き合う若き作曲家、渡邊陸の作品を入れ、個性豊かな作り手の魅力が乱反射するようなめめくるめくアンソロジーを目指す。

木ノ脇道元プロフィールはこちら

1.渡辺裕紀子
Komposition für einzelnen ton [fl, projecter]
作曲2024年キャビネット・オブ・キュリオシティプロデュース時新作

2.エンノ・ポッペ
フルートのための”17の練習曲、第3巻 [fl]
作曲2009年/福井とも子プロデュースから

3.稲森安太己
ゴルジ体 [b-fl]
作曲2022年/稲森安太己プロデュース時新作

4.ティエリー・ティドロウ
シェルター [picc]
作曲2019年/稲森安太己プロデュースから

5.ステファノ・スコダニッビオ
カルタヘナへの帰還 [b-fl]
作曲2001年/福井とも子プロデュースから

6.レジス・カンポ
フルートのための”スフィンクス” [fl]
作曲2002年/福井とも子プロデュースから

7.山本裕之
エンベッディング I
作曲2025年委嘱初演/第5回プロデュース予定

8.中谷通
1_1/128_1 [fl]
作曲2023年初演/鈴木治行プロデュース時委嘱作品

9.渡邊陸
フルートのための”クリスタル” [fl]
作曲2024年/木ノ脇による独自選曲

●座席券:3,000円 ⇒ ネットで購入
●インターネット視聴券:1,500円 ⇒ ネットで購入

 

ペガサス・コンサート Series Vol.VII
(2)飯野智大(打楽器)
Speaking Percussionist〜⾔葉とリズムが交錯する⾳楽〜

2025年129日(火)18:30開場 19:00開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール
 
※このコンサートはサントリー芸術財団佐治敬三賞推薦コンサートです。

本公演は、打楽器と声を融合させた新しい表現を探るプロジェクトである。スイスと日本を拠点に活動する打楽器奏者・飯野智大が、身体と言葉、音と物語のあいだを自在に行き来しながら、語りと演奏が交錯する唯一無二の舞台を創り出します。アペルギスやチチリアーニといった現代音楽の巨匠に加え、日本・スイス・スペインから集った同世代の俊英作曲家たちによる新作が世界初演される本企画は、音楽と言葉の境界を揺るがし、国際的な視座から現代音楽の新たな可能性を照らし出します。前例のない「語る演奏」が、あなたの耳と想像を揺さぶります。

飯野智大プロフィールはこちら

1.ジョルジュ・アペルギス
Action avec son obligé for One percussionist(作曲1982/2014年日本初演

2.マルコ・チチリアーニ
Crash for Singing Percusionist(作曲2007年日本初演

3.向井 航
Alice Down the Punk Hole(作曲2025年委嘱初演

4.村上りの
新作(作曲2025年委嘱初演

5.飯野智大
木(Wood) for Voice and Broken Marimba bar, Live Electronics(作曲2025年初演

6.ヤニク・ソランド
新作(作曲2025年委嘱初演

7.ジェマ・ラゲス・プジョル
新作(作曲2025年委嘱初演

●座席券:3,000円 ⇒ ネットで購入
●インターネット視聴券:1,500円 ⇒ ネットで購入

 

ルイジ・ノーノ×イサオ・ナカムラ(指揮)
〜《Risonanze erranti》日本初演〜

2025年1223日(火)18:30開場 19:00開演
会場:日暮里サニーホール(JR、京成「日暮里」駅 南改札より徒歩1分)

渡独間もないイサオ・ナカムラとノーノが探し当てた“一番大きな音”とは?
その発見から一気に書き上げられたのが《Risonanze erranti》である。
2024年に生誕100年を迎えたノーノ。そして今年、生誕90年の盟友ラッヘンマン。
師弟の響きがここに交わる。(国際部「世界に開く窓」企画制作:福井とも子)

1.ヘルムート・ラッヘンマン/Interieur I (作曲1966年)
打楽器 高瀬真吾

対談 長木誠司×イサオ・ナカムラ

3.ルイジ・ノーノ/Risonanze erranti (作曲1986/87年)
指揮:イサオ・ナカムラ コントラルト:福原寿美枝
フルート:木ノ脇道元 チューバ:橋本晋哉
打楽器:大場章裕・大家一将・神田佳子・窪田健志・新野将之・藤井里佳
エレクトロニクス:有馬純寿

●座席一般券:3,500円 ⇒ ネットで購入
●座席学生券:2,000円 ⇒ ネットで購入(入場時要学生証)
●インターネット視聴券:3,000円 ⇒ ネットで購入

 

主催:特定非営利活動法人日本現代音楽協会(国際現代音楽協会日本支部)
助成:一般社団法人 日本音楽著作権協会 公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団
公益財団法人 花王芸術・科学財団(12/23) 芸術文化振興基金(12/23)
後援:一般社団法人 日本音楽作家団体協議会

ジョージ・ケントゥロス ヴァイオリンリサイタル 新作募集!

現音 in 関西 vol.12 演奏家+作曲家コラボレーションシリーズ
「ジョージ・ケントゥロス ヴァイオリンリサイタル」作品公募

日本現代音楽協会では、2011年より関西会員を中心に、演奏家とのコラボレーション企画を継続してきました。毎回一人(または一団体)の演奏家を迎え、その活動や楽器の魅力を紹介しつつその演奏家のための新作を中心としたリサイタルを開催するというものです。

今回登場するのは、スウェーデンのヴァイオリニスト、ジョージ・ケントロス氏。彼は早くから実験的な音楽表現に取り組み、クラシックと現代音楽の融合、エレクトロニクスとの協働、即興と記譜音楽の往還など、多様な領域で作曲家や演奏家とコラボレーションを行ってきました。

今回の公演は、ケントゥロス氏によるヴァイオリンソロ・リサイタルです。彼のこれまでの活動のほんの一部ですが、まとめたビデオもありますので、ご興味ある方はご覧ください。

自由な発想に基づく斬新な作品を大いに歓迎します。採用された作品は、今後ケントゥロス氏によってヨーロッパなど海外で再演される可能性もあります。この機会を前向きに捉えてくださる方は、ぜひ奮ってご応募ください。(制作:福井とも子

George Kentros(ジョージ・ケントゥロス):ヴァイオリニストのジョージ・ケントゥロス氏は、米国のイェール大学、マネス音楽院、そしてストックホルム王立音楽大学で学んだ。これまで室内楽奏者、ソリスト、時には俳優としてヨーロッパ各地、北中米、日本、オセアニアで演奏を行ってきた。主に現代音楽アンサンブルthe peärls before swïne experienceや、エレクトロニック・デュオthere are no more four seasonsとともに活動している。常に新しく実験的な芸術音楽を目指し、これまで21カ国、200人以上の作曲家に委嘱をしている。その活動によりスウェーデン作曲家協会、エディション・ライマース、北欧作曲家評議会から現代音楽解釈に関する賞を受けている。さらにジャンルを超えたオルタナティブな芸術表現の先駆けとなった前衛的アートクラブSEKTを創設し、新しい音楽と、クラシックや電子音楽とを融合させる実験的プロジェクトの拠点として運営してきた。その後も様々な芸術団体やSound of Stockholm音楽祭、国際現代音楽協会(ISCM)の理事に名を連ねている。近年は、ストックホルム王立美術学院の研究員や、2021~2023年にはストックホルム王立音楽大学のアーティスティック・リサーチャーを務めた。世界各地の学校でマスタークラスや講義を行う一方で、ストックホルム王立音楽大学において、EUの作曲家と演奏家のための修士課程Copecoプログラムの一環として現代音楽実践を指導している。現在は前衛芸術団体フィルキンゲンの副会長を務めている。

 

▼作品募集要項

募集内容伴奏を伴わないヴァイオリン・ソロのために書かれた新作。1人2作品まで応募可。ライブ・エレクトロニクスは不可、フィクストメディアを用いるなど簡易なエレクトロニクスを使用したい場合は必ず事前に問い合わせをすること。またそれにかかる諸経費は全て作曲者が負担する。

演奏時間5分程度(6分を超えないもの)

募集締切:2025年12月25日(木)23:59必着

選考:ジョージ・ケントゥロス、福井とも子

応募方法:(1)楽譜 (2)作品名・作曲年・演奏時間 (3)応募者氏名・連絡先 (4)協会会員/一般/25歳以下の区分をメールで提出、または郵送。

応募料:無料。作品が選ばれた場合、以下の出品料が必要になります(演奏料含む。出品料相当のチケットをさしあげます)。

【日本現代音楽協会会員】4万円
【一般】5万円
【一般25歳以下】2万円

応募・問合せ先
特定非営利活動法人日本現代音楽協会
〒141-0031東京都品川区西五反田7-19-6-2F
電話:03-6417-0393  FAX:03-6417-0394
メール:80th@jscm.net

 

ジョージ・ケントゥロス ヴァイオリンリサイタル 公演情報
2026年3月27日(金)19:00開演予定
会場:豊中市立文化芸術センター小ホール(曽根)

第42回現音作曲新人賞入選者発表

第42回現音作曲新人賞の譜面審査を行いました(テーマ:弦楽器および木管楽器を中心とした二重奏、または三重奏作品)。
全25作の応募の中から、徳永崇審査員長、河添達也・渡辺俊哉審査員による厳正な審査の結果、新人賞候補作品(入選作)に下記の4作が選ばれました。
2025年12月3日(水)18:45開演、東京オペラシティリサイタルホールにて行われる〈現音 Music of Our Time 2025〉「第42回現音作曲新人賞本選会」に於いて、演奏審査により新人賞受賞作を決定します。

 

■入選作(作曲者名五十音順に表記)

浦野 真珠(URANO Mami)
《ヴィーナス・フライトラップ – 2人の弦楽器奏者とフルート奏者のための – 》vn, va, fl

上岡 丈晃(KAMIOKA Takeru)
《Regeneration for Flute, Clarinet, and Viola》

近持 亮平(CHIKAMOCHI Ryohei)
《Share the Space for Saxophone (Alto, Baritone) and Contrabass》

劉昊桐(LIU Haotong)
《Endless クラリネット、ヴァイオリン、ピアノのために》