フォーラム・コンサート第1夜のプログラムノート

フォーラム・コンサート第1夜 (11月30日)  出品作曲家プログラム・ノート

フォーラム・コンサート出品作のプログラム・ノートを先行公開します。
作曲者によっては追加メッセージもあります。

「作品について」をお読みになると、聴く前から曲のイメージが膨らむのでは。
11月30日には、これらのメッセージが実際にどのように音像化されているかを確かめに、
是非とも東京オペラシティリサイタルホールまで足をお運びください。

①  浅野藤也
クラリネット、ヴィオラ、ピアノのための音楽
(作曲2023年 初演)

◎作品について
 3つの楽器がそれぞれに密接に寄り添い、3つの楽器は少しずつずれ不規則性を強調しながら、3者で一つの神秘的な音楽を作っていくことを目指して作曲を試みた。

◎作曲者プロフィール
作曲を浦田健次郎、ピアノを故庄子みどりの各氏に師事。2006年第17回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門入選、2008年第12回日本の音楽展•作曲賞入選、2009年第14回東京国際室内楽作曲コンクール第3位。2012年東アジアの現代音楽祭inヒロシマ、2014年東アジア音楽祭inヒロシマに参加。2020年2月OM-2公演舞台音楽を担当。

 

②  楠知子
組曲 気候変動 より Ⅴ ソナタ
(作曲2023年/2023年改訂初演)

◎作品について
 正午と夕方に自宅の近隣の公共施設からチャイムが流れる。それは幾分の狂いもなく毎日鳴り響く。このメロディーを聞くと、(仕事や勉強を休んで食事の準備をしなさい)とか(仕事や遊びはもう終わり食事と休眠を取りなさい)と言われているように私は感じる。年を取った身には少しつらいなと思いながらたった30秒位のこの励ましによって、決まった時間に私は食事をとることができる。日々健康に生きていくこができるのだ。。。。そういえば、身内の臨終のときも、何故か夕方にラジオ体操の音楽がホールから流れていたっけ。。。(今日も1日生きられた。もう朝か)と本人は勘違いして、最後の呼吸を終えたのだろうか。曲はソナタ形式でチャイムのなる風景の第1主題とキーボードの打音からの連想の第2主題とからなる。

作曲者プロフィール
東京藝術大学作曲科卒業。作曲を池内友次郎、矢代秋雄、佐藤眞、永富正之、原博の各氏に、ピアノを石澤秀子氏、岡本暁子氏に師事。日本音楽集団研究団員修了。インディアナ大学大学院作曲科他留学。ガウディアムス国際コンクールオーケストラ部門、室内楽部門入選。現音60周年記念事業で団体の1員として音楽之友社賞団体賞。本年Maxサマースクール・イン・藝大受講。

 

③  田中範康
二十五絃箏のための音楽
(作曲2023年 初演)

◎作品について
 歴史と共には発展を繰り返してきた箏は、取り分けソロ楽器としては、他の邦楽器類には類を見ないほど豊かな表現力をも持っていると言える。
 その中で、今回の作品で使用する二十五絃箏は、箏の中でも新しく開発された楽器であるが、音域の広がりと共に、音色についても取り分け多彩な響きを持つようになり、音楽表現の幅が広がったのである。
 本作品では、特殊奏法に依拠するのではなく、本来「箏」のもっている伝統的な音楽のあり方、流れに焦点をあてて創作を試みた。細かく動く8分音符で常動的な複数の動機群を核として音楽を構成しているが、響きの残像を目指した楽想や、それに演奏者自らの声=歌に 柿本人麻呂の「東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ」を加えた部分がそれに加わり、全曲を構成している。

◎作曲者プロフィール
国立音楽大学作曲学科、器楽学科オルガン専攻を卒業。ドイツ、ベルギー、北欧、フランス、アメリカなど、世界各地の音楽祭、演奏会、放送メディアなどで作品が紹介されている。
またVienna Modern MastersやALMレコードで計4枚のアルバム(VMM2011. VMM2036. ALCD87. ALCD103)がCDリリースされている他、韓国、メキシコ、ドイツなどでも作品が収録されている。
現在、名古屋芸術大学、同大学院教授。公益財団法人愛知県文化振興事業団理事。日本現代音楽協会会員

 

④  河野敦朗
the unknown
(作曲2023年 初演)

◎作品について
 私自身の最初の音楽の作品は点描的なものだった。点描と言う言葉は、絵画でも音楽でも、 その技法として、スタイルとして、概念として、それぞれの作家の、それぞれの作品によっ て様々に語られる。またそれは、色の粒子や音の粒子と言った、よりあいまいな言い方でも 言い表される。本来粒子とは物質の本体と言うことであるから、多くの場合技法的な意味で しか用いられていない。最初に点描を選択したとき、私自身は、点描スタイルというより、 おそらく粒子としての本来的なとらえかたに新しい創作の発想を得たように思う。その本 質はこの作品でも変わらない。そこには、意味も連続性も一切持たない、非連続なものとし ての粒子という概念があったように思う。そしてその粒子のあらゆるふるまいから生じる、
構造や展開や、あらたなよろこばしい出来事、unknOwn(未知のもの)への憧憬。

◎作曲者プロフィール
東京生まれ。東京芸術大学作曲科卒業。在学中より作品を発表 し、卒業 と同時に発表 した作 品が新聞 。音楽誌で評価を得る。その後日本現代音楽協会を中心に新作を発表する。
主要作品:・ particle(pf)
     ・5人の奏者による小空間のための試み (2c13vc)ISCM国内推薦作品
大分県立芸術文化短大名誉教授。大阪府高槻市在住。

 

⑤  くりもとようこ
八事のホケトゥス
(作曲2023年 初演)

◎作品について
 2023年に作曲し、10月に名古屋で行われた9回目の個展で初演された。
『ホケトゥスとは、13-14世紀頃の多声楽曲で用いられた技法の一つで、その語源は「しゃっくり」に由来するものであろう。旋律を休符で断片にし、2声以上の声部で交互に呈示する』と辞書に書いてあるが、実際に聴いたことは無い。『ウェーベルンの“点描法”も一種のホケトゥスと言えなくもないであろう。』の件の方がピンと来る。
 今回、音域の似ている二つの楽器で、一本の旋律を書いてみようと思った。その時にフッとホケトゥスという言葉が頭をよぎったので題名に付けてしまった。 ホケトゥス風にした方が良かったかなァ?
 曲は三つの小曲に分かれており、2曲目はトボけた会話、3曲目は撚(よ)り合わせて一本にしたメロディである。
 尚、八事(やごと)とは、今住んでいる名古屋の地名である。

◎作曲者プロフィール
愛知県立芸術大学及び大学院修了。作 曲・演奏・パフォーマンスをする。主要作品として《、発 声と様式のモード〜新しいオペラへの試み》、名フィ ルより委嘱された《弦楽器、打楽器、ピアノと和太 鼓のための「天・無・極」》等がある。2014 年、 現代日本の作曲家シリーズ第 47 集として CD『くり もとようこ自作自演集』がフォンテックよりリリース。 1992 年度名古屋市芸術奨励賞受賞。現在、日本 現代音楽協会、日本作曲家協議会各会員。

 

⑥  植野洋美
自由の略奪・平和の祈り~エレクトロニクスとライブソロピアノのための
(作曲2023年 初演)

◎作品について
 現在、世界各地で悲しい事態が起きている。人命や自由を奪う行為を誰しも断じて容認できるものではない。私は一日も早い世界平和を願いつつ本作品を書いたが、誰も何もできない無力さを痛感する。同様のテーマで既に4曲―広島の地に捧げた2曲「つぶやき-核兵器反対の歌」(sp)と「ピコ・ワールド-平和の祈り」(sax large ens,委嘱)、東日本大震災支援企画参加「鎮魂の祈りと未来への希望」(vn,pf,委嘱)、ベルリン・ユダヤ博物館にて「コズミック・レイ-バッハへのオマージュ」(vn)―が有り、2作目のコラール風「祈り」の旋律を本作品で再現、また複数の紛争当事国国歌の「自由」や「平和」が歌われる1フレーズを引用している。

◎作曲者プロフィール
神戸女学院大学(KC)、大阪音楽大学大学院(OCM)、東京芸術大学大学院を作曲で、エリザベト音楽大学大学院博士課程(EUM)を音楽学で各卒業及び修了、Ph.D.。KCクラブ・ファンタジー賞、吹田音楽コンクール(作曲)1位、OCMコンクール奨励賞、EUM学長表彰他受賞、国際ピアノデュオコンクール(作曲) 、現音作曲新人賞他入選。フェリス女学院大学、EUM、広島大学大学院他講師、東京かつしか作曲コンクール企画委員会会長審査委員長を経て現在、Coily合同会社代表社員を務め、後進の指導と音感教育機器研究開発、筋電型リハビリ用楽器で広島大学、手指故障予防ピアノ打鍵法で東京理科大学と共同研究し、音響学会等国内学会やISPS、IEEE等国際学会で発表。現代音楽協会、作曲家協議会、音響学会、IEEE会員。

 

⑦  ロクリアン正岡
弦楽四重奏曲第5番「いのしし人間の諸相」
第一楽章「猪の喜怒哀楽」第二楽章「五穀豊穣の踊りと祈り」第三楽章「横綱土俵入り」
第四楽章「猪のアイデンティティー」(計20分)
(作曲2023年 初演)

◎作品について
 2019年の猪年以来、猪楽曲作成時、私の意識は「人間として猪を尊敬し猪として人間を尊敬し」の繰り返しで上昇一方。まさにエッシャーの無限階段だが下向一方の「相互軽蔑」には無関心。
 なぜ猪?その姿や生体の単純さ、原始性、エネルギッシュで泥臭い逞しさは人間を含めた哺乳類を代表させるに相応しいからだ。ただし人間は自我が猛烈に発達し、いらん戦争で共食いを繰り返し、地球の自然や気象まで壊し、おまけに生成AIを使いまわして狂い死にでもしたいのか?彼らには余計な属性がありすぎだ。作曲で私はその“余計な属性”を捨てたが、実はそれこそ弦楽四重奏曲作曲の絶対条件。つまり、私はその伝統に服し得たのであった(cf.ニーチェの「ツァラトゥストラ」、カントの「物自体」)    
 ここで翻って考えるに内面の出来事にすぎぬとはいえ、人になったり猪になったりできるものとはいったい何だろう。「それ」だ!それこそ、万物間の“障害=壁”を取り除くものだ。なぜなら「それ」にとっては死生間の壁すら無い!のだから。生きながら「それ」を体験するのに最も優れた媒体、弦楽四重奏曲なる編成に栄光あれ!

◎追加アピール文
2019年の猪年以来、猪楽曲作成時は、「人間として猪を尊敬し猪として人間を尊敬し」の上昇一方。まさにエッシャーの無限階段なのだが、下降の「軽蔑」には無関心。その過程でテレビ人モーリー・ロバートソン氏の数度のツィートがあり視聴回数上昇。https://youtu.be/5aI4ywGyhjw

なぜ猪?その姿や生体の単純さ、原始性、エネルギッシュで泥臭い逞しさは人間を含めた哺乳類を代表させるに相応しい。

ただし人間は自我が猛烈に発達し、いらん戦争で共食いを繰り返し、地球の自然や気象まで壊し、おまけに生成AIを使いまわして狂い死にでもしたいのか?彼らには余計な属性がありすぎだ。

作曲で私はその“余計な属性”を捨てたが、実はそれこそ弦楽四重奏曲作曲の絶対条件。私はその伝統に服し得たのであった(cf.「ツァラトゥストラ」「物自体」)。

 

⑧  松岡貴史 
秋の夜長は…
(作曲2023  初演)

◎作品について
 2004年5月、オーストリーの音楽祭Klangfrühlingで初演した尺八と二十絃箏のための「春の宵は・・・」を、今年5月徳島で庄野文哉さん、遠藤咲季子さんの演奏で再演しました(YouTube視聴可)。絶妙の演奏に、このフォーラムコンサートでも是非と思ったのですが時は秋、ならば新作をと思い、「秋の夜長は・・・」を作曲しました。   初秋から晩秋に向かい、寒くなり、夜が長くなる・・・虫のすだく音、満天に広がる星・・・家の灯りに人の温もりを想う・・・そんな情趣を尺八と箏が紡ぎ出します。描かれるものは具象であっても、それらの関わり方によって抽象の世界が醸し出され、秋がしっとりと深まるといいなと思っています。

◎作曲者プロフィール
東京藝大作曲科卒業、大学院修了
1981年、ドイツ学術交流会(DAAD)の給費留学生として渡独。シュトゥットガルト市作曲賞、エルディング・オルガン曲国際作曲コンクール第1位他の受賞。作品は多岐に亘り、国内の様々なコンサートの他,海外の音楽祭でも取り上げられている。近年の作品:音楽絵巻「竹取物語」(ファゴット、ハープ、朗読、映像)、音楽物語「満月の夜の伝説」(フルート、クラリネット、ピアノ、朗読、映像)、音楽昔噺「たの久」(アルト、バリトン、ピアノ)、「新しい朝に」(オーケストラ)、「den Krieg?」(クラリネット、エレキギター)。徳島文理大学教授、日本現代音楽協会日本作曲家協議会会員