第35回現音作曲新人賞受賞の言葉〜波立裕矢


第35回現音作曲新人賞受賞:波立裕矢

表彰状を授与される波立裕矢さん(左)と、プレゼンターの森垣桂一日本現代音楽協会副会長(右)。

この度は、拙作が日本屈指の現代音楽プラットフォームであるアンサンブル・コンテンポラリーαの演奏家の皆様によって、非常に熱心な取り組みのもと初演の日の目を浴びることができたこと、そしてその結果としてこのような賞を頂けたことを本当に嬉しく思います。先達の皆様は、日頃から尊敬する憧れの先輩ばかりで、その末席を汚すことになり、大変身の引き締まる思いです。
今回本選会でご一緒させていただいた皆様も、それぞれ独自のスタイルを持ち、したたかに作曲活動を続けるひときわ意思の強い方々でした。会話する時間こそあまりなかったものの、作品から大いに勉強させていただきました。中には近年国際作曲賞で躍進を続ける中国の方もおり、国際的な情報交換も含め、有益な会話を交わすこともできました。

このような素晴らしい企画の一方で、作曲家として、様々な出来事が象徴する現代音楽界の経済的な衰退について憂慮の念を抱かずにはいられぬところです。
経済的な安定性は、芸術を評価する第一次的な指標でないことはごく当然であるとしても、やはりその活動規模に影響しないとまでは考えることができません。今回の受賞で油断するなということを、本当にたくさんの人から真摯にご指摘いただきました。それは私への教育的忠告としてのみならず、この世界の厳しい状況の宣告としても受け取れるものでした。
この状況を現実的にどう打開するか、現段階でのはっきりとした策は打ち立てられていないというのが正直なところです。しかし、今自然にふつふつと湧いてくる作曲への意欲は、私にとって現代音楽の終焉はまだ訪れていないことを意味しており、それが失われぬ限り、私は生涯つづくであろう関心対象として、西洋音楽のマイルストーンとのささやかな対話を愚直に続けていくつもりです。

また、最後にはなりますが、ここまで私が成長できたのは、高校3年次に作曲を始めてからというもの、私を支えてくれた方々のおかげに他ありません。特に本年度、私を取り巻く環境が大きく変化する中、ある意味で途中参加的な入学となった私を暖かく歓迎してくれただけでなく、大きな刺激を与えてくれた藝大の皆様、卒業後も連絡を欠かさず関心を共有してくれる愛知県芸の皆様、また愛知から戻った私をあたたかく迎えてくれた地元の皆様には、本当に頭が上がりません。
未だうだつの上がらぬ私ですが、将来に向けさらなる努力で期待に応えたいと思っています。今後とも宜しくお願い致します。
これまでお世話になった愛ある先生方、女手一人で私を支えてくれた母、物心ついたときから一番長くの時間を共有している祖母、そして少年時代を共に過ごし、今まさに病に侵され先立とうとしている我が家の犬へのひとしおの感謝の意をもちまして、本文の結びとさせていただきます。

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