第33回現音作曲新人賞受賞の言葉〜伊藤 彰

第33回現音作曲新人賞受賞:伊藤 彰

この度は「第33回現音作曲新人賞」、併せて「聴衆賞」を受賞できましたこと、またこのような舞台で拙作が演奏されましたことを大変嬉しく思います。3日間のリハーサル、そして様々な作品を聴くことができた演奏会は、大変有意義な時間となりました。
素晴らしい演奏をして下さった指揮の松尾祐孝先生、二十絃箏の田村法子さん、ヴィオラの甲斐史子さん、ギターの山田岳さん。審査員長の山本裕之先生、審査員の新垣隆先生、福井とも子先生。そして練習場所を提供して下さった吉村七重先生。今回、素晴らしい演奏家、作曲家の皆さんとご一緒させて頂いたこと、多くの聴衆の皆さんと音楽を共有できたことは何事にも代え難い貴重な経験となりました。この場をお借りして、改めて深く感謝申し上げます。
受賞作となった《好奇心ドリブン》(2016)は、構想から含めると作曲に非常に長い時間を費やしており、独奏ギター、二十絃箏、ハープ、弦楽三重奏のために書いた拙作《In transparent labyrinth(透明な迷宮の中で)》(2014-15)に基づいていますが、今作では各楽器により明確な役割を持たせることで再構成しました。この作品は、書き上げるまで多くの作曲家の先生方、多くの友人にアイデアの成熟を手伝って頂きました。今回の現音作曲新人賞の募集テーマは「撥弦邦楽器」ということで、私は「3つの異なる弦楽器」による「音色」の違いを聴かせることを創作のテーマとして作曲しました。結果的に邦楽器が持つ伝統とは、少し距離を置いたアプローチの仕方となったように思います。
自分の音楽語法を獲得することの難しさを日々痛感するばかりですが、創作を通じて出会う新たな音楽の発見、そして何よりも人との出会いや交流が私にとって作曲することの喜びです。この貴重な経験を糧に、今後もより一層の精進を重ねたいと思います。

 

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