福士則夫のチビテッラ日記〜第12回〜

●第12回「最後の遠足」

24日(木)は、いよいよワイン工場。と思ったらまずはトスカナ地方で最も古い教会のあるモンテプリツァーノから始まる。ここでまた例のガイドが活躍。説明の途中に逃げ出し、一人離れて教会の回りを散策していると、自由をモットーにしているアメリカ人ベスもデーヴィーもやはり勝手に気ままにうろついていた。昼食は木陰でインターンが作ってきたサンドウィッチと昨日の残りのパスタとワイン。小休止の間にざっと町を見物。

鐘撞き王子?

鐘撞き王子?

この小さな町にしては意外にもしゃれた革鞄の店に釘付け。色の使い方、特にそのカラーのコントラストが素晴らしくまさにイタリアン。多分革製品で有名なフィレンツェの方がいろいろ物色できるだろうとも思っていたが、値段の安さにも引かれて娘のプレゼントにショルダーバックを包装してもらう。次の目的地は今いる町よりさらに小型にした町ピエンザ。10分もあれば町を一回り出来てしまうのに1時間以上も自由時間になり、歩いているとそこかしこで誰かと鉢合わせする。しゃれたカフェーもなく小さな公園の木陰で暇を潰す。5時過ぎにこの日に雇ったらしい運転手付きのバスに乗り込み、いよいよワイン工場のあるモンタルチノに向け出発。

説明はいいから早く呑みたい。

説明はいいから早く呑みたい

途中、運転手は道を何度も通行人に聞きながらBARBIという古い歴史を持つ比較的小さなワイン工場にようやく到着。ガイドが熱心に喋っている内容をジェシカが時々フランス語で訳してくれるのだが、まだら模様にしか理解出来ない。理由は早く試飲したい気持ちが先立っていて話も上の空。30分もかけて説明が終わった後いよいよワインにありつく。2003年と2006年のワインが提供されたが03年の方が熟成していて断然良かったが値段も25ユーロで結構良い値段である。

日も暮れ始めた頃、屋外にテーブルが用意されたレストランで生ハムの盛り合わせから始まりグラタン、ステアリブ、チーズ、ケーキにカモミールティー。又もや肥満の心配が頭をかすめ、そうだ明日は朝食抜きにしよう。帰りは道を間違えたらしくバスから降りたのは深夜。もっともその時間帯は日本が朝を迎える時でもあり、タイミングよく日本を出発する前のカミさんと話をする。 こちらに家内とやってくる長女がユーロスターのチケットを入手するためPCでいろいろ検索しているらしい。ガンバレお嬢さん。疲れ果ててベッドに潜り込む。

ディナーは屋外でフルコース

ディナーは屋外でフルコース

★次回連載最終回!!「さようなら」予告

7月25日(金)は卒業式。このセッションは60日間4期に分かれていて、4月に始まり10月末まで延べ毎年30人ほどの芸術家が招聘され我々は2期目に当たる。時期としては4期の中で最も良い季節かもしれない。城の鐘の音を合図にディレクターであるダーナの家の庭先で城のスタッフも全員参加するレセプションが始まる…

更新は10月26日(水)です。お楽しみに!

創立80周年記念「新しい音楽のカタチ」上演曲発表!

日本現代音楽協会創立80周年を記念して開催する音楽祭「新しい音楽のカタチ」上演作を協会内外から広く募集しておりましたが、この度、多数の応募作の中から下記の作品の上演が決定しました。80年の歴史を振り返るアンソロジー作品も加え、2012年1月21日〜22日の2日間、全5コンサートに亘って上演致します。

ボーナスコンサートやワークショップの開催も予定しており、土日の2日間にたっぷりと、様々な「新しい音楽のカタチ」が楽しめるイヴェントです!

 

2012年1月21日(土)3公演

▼室内楽 I 〜winds〜 制作:安良岡 章夫

★伊藤 謙一郎/”Glide – Grade – Grain” for Clarinet Solo(2010/初演)
植野 洋美/新作(2011/初演)
田丸 彩和子/In The Darkness for clarinet solo -Homage to Kajii Motojiro-(2010/初演)
橋本 信/Sunset reflection(2011/初演)
ロクリアン正岡/アルトフルートとチェロによる音楽「男というもの」(2011/初演)
他アンソロジー2作品を予定

▼コンピュータ音楽 制作:莱 孝之

★小坂 直敏/新作(2011/初演)
小島 有利子/”Undulations” for viola and Max/MSP(2011/初演)
蒲池 愛/Paradox for Violin Solo and Live Electronics(2011/初演)
水野 みか子/string space
莱 孝之/新作(2011/初演)
他アンソロジー2作品を予定

▼ヴォーカル・アンサンブル 制作:鈴木 純明

白澤 道夫/opera phaze–dio fa(2011/初演)
門脇 治/Thee Xt as i.e.(2011/初演)
松尾 祐孝/Vocal Sinfonietta(日本初演)
坪能 克裕/新作(2011/初演)
他アンソロジー2作品を予定

 

2012年1月22日(日)2公演

▼ピアノ・デュオ 制作:金子仁美

石田 匡志/色界(2011/初演)
★奥貫 裕子/Hybrid(2008)
梶 俊男/bi – camorra(1998)
志田 笙子/清見寺 へ 暮れて 帰れば(2004-2005)
松平 頼曉/Kurtosis II(1982)
湯浅 譲二/2台のピアノのためのプロジェクション(2004)
他アンソロジー2作品を予定

▼室内楽II〜strings〜 制作:坪能克裕・松尾祐孝

岡坂 慶紀/ヴィオラとピアノのための《ダイアローグ》
倉内 直子/「光の場」ーヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための(2011/初演)
露木 正登/3つの断章〜チェロとピアノのための(2011/初演)
森田 泰之進/PRANA(2010/初演)
他アンソロジー2作品を予定

 

※タイトルや演奏順、アンソロジー作品の上演数は変更となる場合があります。「★」は一般公募からの選曲作品。

福士則夫のチビテッラ日記〜第11回〜

●第11回「カップルのガイド現れる」

自動走行のミニモノレール

自動走行のミニモノレール

22日(火)の遠足は城から最も近い街ペルージャに向けて出発。この日と24日にトスカナ地方へ行く旅行のガイドに何故かイタリア人の男女のカップルが雇われてわれわれに同行する。以前ペルージャで活躍していた中田英寿が駆け回ったサッカー場の広い駐車場に車を置き、中心街には自動で運行されているミニモノレールで小高い丘を登っていく。

どれにしようか?

どれにしようか?

たどり着いた大きな教会を前にしてガイドは身振り手振りで早速しゃべり始めるがこれがしばしの間続くと、恋人らしき女性がその後に続き延々とまた説明が始まる。中心の広場へ行く途中に洒落たお菓子でウインドーを飾っているカフェーがあり此処で一服。ペルージャはディエゴが城に来る6年前まで住んでいたらしく、顔なじみの店で昼食。くだんのガイドと向かい合わせになり又もやべらべらと喋り始めるが、彼の説明ではペルージャは塩の町で栄えたらしく、日本にも塩がキーワードになっている話があるかと聞かれる。何でこいつらフランス語も出来るのだと内心舌打ちをしながら、戦国時代の英雄である山国の武田信玄に上杉謙信が塩を送って戦いが一時休戦になった話をしたが、電子辞書を引き引き、冷や汗を流しながら食べる昼食は味わっている余裕がなかった。

町の中心地にある教会ではCAMBIOが描いたフレスコ画の中に、サインのつもりなのだろうか彼の肖像画も書き込まれた不思議な絵が並んでいた。再び車に乗り込んで、郊外にある現在はネスレの経営するチョコレート工場を見学。ペルージャのチョコレートは名物の一つらしいがウンブリアといえばなんと言ってもトスカナ地方のワインでしょう、と思いつつベルトコンベアに乗ったチョコレートの行方を目で追っていく。

サンドラおばちゃんの作品

サンドラおばちゃんの作品

途中のコーヒータイムでダーラが突然消えてしまったが戻ってきたときは二人づれ。最後の一週間は家族を呼び寄せても良いのだがどうやらペルージャまでやって来た奥さんを迎えに行ったらしい。現れたのはなんと新潟生まれの生粋の日本人、驚かそうと今回の事を私に黙っていたらしい。彼の口から時々日本語の単語が飛び出す理由がようやくわかった。帰路の車中では久しぶりに聞く日本語を懐かしみながら城に戻る。23日は今回のフェロー最後のプレゼンテーションでイタリア人ヴィジュアル作家サンドラが通っている工房でのレクチャー、その後に城に戻り2度目のレクチャー。粘土に絵付けした人形が並び、映像もアニメーションの世界に近く、少女趣味的で新鮮な驚きとかインパクトに欠けていたが、アメリカなどではかなり名の通った作家らしいのは意外だった。

★次回第12回「最後の遠足」予告

24日(木)は、いよいよワイン工場。と思ったらまずはトスカナ地方で最も古い教会のあるモンテプリツァーノから始まる。ここでまた例のガイドが活躍。説明の途中に逃げ出し、一人離れて教会の回りを散策していると、自由をモットーにしているアメリカ人ベスもデーヴィーもやはり勝手に気ままにうろついていた…

更新は10月19日(水)です。お楽しみに!

「宮本妥子パーカッションリサイタル」公募作品選曲発表

日本現代音楽協会会員・制作担当:中村典子

日本現代音楽協会(現音)の創立80周年記念事業の一環として開催される「宮本妥子パーカッションリサイタル」の公募作品選考会議が9月中旬、京都と東京を結んで行われ、リサイタルの全曲目が決定いたしましたので発表いたします。

公募作品からの選出は2作品となりました。東京会場と京都会場にすべての選考委員が集まり、作者名を伏せた譜面選考により討議を重ねました。宮本パーカッションリサイタルに寄せられプログラミングされている招待作品、会員作品、アンソロジー作品とのベストマッチングを熟考、奏者との密度高い恊働、首都圏外での現代音楽の更なる展開の場となる京都での本公演から新鮮な作品が発信できることを願い、さまざまな全ての条件をかんがみて作品選出にいたりました。

この選曲作品2曲の中から1曲を、2012年度に東京で開催する現音主催公演で再演する招待作品として選出します。招待作品の選出は、リサイタルに於いて聴衆の投票で決定します。みなさまぜひリサイタルにご参加くださり、投票にどうかご参加ください。宮本妥子パーカッションリサイタル、なにとぞご注目ご期待ください!

●選考委員
宮本妥子(滋賀・打楽器奏者)
増田真結(京都・現音作曲新人賞受賞者)福井とも子(大阪・現音理事)
田口雅英(奈良・現音会員)南川弥生(兵庫・現音会員)
伴谷晃二(広島・現音理事)松尾祐孝(東京・現音副会長)
坪能克裕(東京・日本現代音楽協会会長)中村典子(京都・企画制作者)

 

▼宮本妥子パーカッションリサイタル
2012年2月17日(金)19時開演(18時30分開場)京都芸術センター・フリースペース

●公募選出作品
◎小松淳史/You are sleeping in my hand 〜 for solo percussion〜(2011/初演)
京都市立芸術大学音楽学部作曲専攻卒業。十河陽一、藤島昌寿、松本日之春、前田守一、中村典子、岡田加津子の各氏に師事。第21回京都フランス音楽アカデミーにおいて、アラン・ゴーサン氏のクラスを修了。現在、京都市立芸術大学大学院音楽研究科作曲専攻修士1回生。

◎富田さやか/雨乞い(2011)
同志社女子大学学芸学部音楽学科作曲理論専攻卒業。同大学音楽学会《頌啓会》特別専修課程修了。在学中に中瀬古和音楽記念賞受賞。これまでに作曲を糀場富美子、成田和子、西村朗、細川俊夫の各氏に師事。現在、東京音楽大学大学院1年在学。

●会員作品
近藤浩平/けもののけはい 作品123(2011/初演)
諸橋玲子/玄II(2011/初演)
松永通温:A Dreamer and a Trespasser(2011/初演)
松尾祐孝/フォノX 〜打楽器独奏の為の狂詩曲<パイ>(2011/初演)
伴谷晃二/<ヒロシマの詩 I >マリンバのために(2010)

●アンソロジー作品
ジョージ・クラム/犬の世界 より(1998)

佐藤紀雄&山田岳ギターデュオリサイタル〜会員:中谷通

共に朝日現代音楽賞の受賞者でもあるギタリストの佐藤紀雄さんと山田岳さんによるコンサート「佐藤紀雄&山田岳 ギターデュオリサイタル」が、2011年10月25日(火)に東京オペラシティ近江楽堂にて行われます。このコンサートで初演していただく《2_1/64_1》ではギターの種類の選択はお任せしていたのですが、スチール弦ギターの生音で演奏する予定とのこと。以下にこの作品についてと、公演の詳細を記します。

《2_1/64_1》について:

左が440Hz、右がカスタムの388.36Hzの音叉。

左が440Hz、右がカスタムの388.36Hzの音叉。

【背景】
調的な音楽では、ある音高の振動周期を中心として、これと他の音程の振動周期が関わりを持つ。調性の本質が、周期的な現象間の関係性にあるとしたら、可聴域よりも長い周期をもつ時間現象も調的に構築することが可能といえる。そして、私たちが経験し続けている1日の周期との関係を築くこともできるはずだ。

【基準周期】
1939年に国際会議にて提案された A = 440Hz の国際基準ピッチは、後に発足したISO(国際標準化機構)によって国際規格に制定された。しかし、440という数字に具体的な根拠があるわけではなく、比率関係から成り立つ作品が参照する基準としては、どうしても信用することができなかった。この作品ではこのような周期ではなく、私たち地球上の生物がドローンや持続低音のように経験し続けている、1日の周期(約 0.000011574Hz)を基準周期とする。

388.36±0.05Hz

388.36±0.05Hz

【高次の基準】
これにより基準ピッチもまた、基準周期と整数比関係を持った相対的なピッチの一つとなる。オクターヴの比率関係を可聴域外の周期にも適用すると、1日の周期の25オクターヴ上の周期(G = 388.36Hz)がこの作品の基準ピッチに、17オクターヴ上の周期(M.M. 91)が基準テンポに、6オクターヴ上の1周期分(22分30秒)が全体の長さに定められたことになる。

【比率】
これらを基にして、ピッチやリズムなどを含めた全てのオクターヴ内の周期が、41の整数比関係(256 : 260 : 264 : 270 : 273 : 280 : 286 : 288 : 294 : 297 : 300 : 308 : 312 : 315 : 320 : 324 : 330 : 336 : 352 : 360 : 363 : 364 : 378 : 384 : 390 : 392 : 396 : 400 : 416 : 420 : 429 : 432 : 440 : 448 : 450 : 462 : 468 : 480 : 484 : 495 : 504)の中で、縦横に関わり合う。
【楽器と演奏】
特殊調弦された2本のギターは自然ハーモニクスのみで演奏され、ギター弦とフレットが接触する事は一度も無い。

 

公演チラシ

公演チラシ

▼佐藤紀雄&山田岳ギターデュオリサイタル

【日時・場所】
2011年10月25日(火)18:30会場/19:00開演
東京オペラシティ 近江楽堂

【曲目】
中谷 通:2_1/64_1 (2009)
向井 耕平:4つの詩曲 (1992)
ジャック・ボディ:アフリカン・ストリングス (2003)
スコット・ジョンソン:バワリー・ハウント (2005)
エベルト・ヴァスケス:エスパシオス・トランシトリオス (2000)

【料金】
前売2500円 当日3000円