競楽XI本選出場者紹介〜川村恵里佳(ピアノ)

kawamura

▼本選演奏曲
武満 徹/雨の樹 素描(1982)
武満 徹/雨の樹 素描II —オリヴィエ・メシアンの追憶に—(1992)
Elliott CARTER/Two thoughts about the piano
1. Intermittences(2005)
2. Caténaires(2006)

 

本選では、心から尊敬する2人の作曲家の作品を演奏します。

武満徹の《雨の樹 素描》、《雨の樹 素描II —オリヴィエ・メシアンの追憶に—》は、大江健三郎の短編『頭のいい「雨の木」』に触発され書かれました。葉から雨のように滴り落ちるしずく、風に吹かれた梢のざわめき、辺りに漂う水の匂い、それを取り巻く闇と光、どこからか聴こえてくる神秘的な歌…。小品ながら、無限の時空間の広がりを感じさせる珠玉の作品です。

カーターの《ピアノについての2つの考察》はカーター97〜98歳の年に書かれた作品で、年齢を重ねても衰え知らずの彼の活き活きとしたエネルギーと鋭い切れ味に満ちた、ユニークな音楽です。
1曲目の〈Intermittences〉では、音楽の中での”静寂”のもつ様々な意味や、ピアノの響きの可能性を追求しています。2曲目の〈Caténaires〉は高速の16分音符が連なった1本のラインで書かれた作品で、不規則なアクセントや連打、跳躍など、まるで予測のつかない方向に火花を散らしながら、約4分間、一気呵成に音楽を紡いでいきます。

ごく当たり前のことかもしれませんが、現代音楽に限らず、音楽をするということは何よりも人間と率直に向き合うことだと最近よく感じています。楽譜から滲み出る作曲家の内面と、今の自分のありのままの内面に向き合い見つけた何かを、舞台の上で、私自身の語り口で皆様にお伝えしたいと思います。

◎プロフィール
1991年神奈川県生まれ。東京音楽大学音楽学部器楽専攻(ピアノ演奏家コース)卒業。在学中、学内オーディション合格者によるソロ・室内楽定期演奏会において室内楽部門に出演、及び、作曲部門にて自作曲を発表。現在、同大学院音楽研究科修士課程鍵盤楽器研究領域(伴奏)に在籍し、ピアノ及び作曲を土田英介氏に師事。またピアノを播本枝末子、石井克典、山洞智の各氏に師事。

 

▼予選演奏曲
Elliot CARTER/ピアノ・ソナタ 第1楽章(1945-1946)