深澤舞*ボストン便り(9)

街路樹にも花がつき始めました

街路樹にも花がつき始めました

毎年、街の中心を流れるチャールズ川がすっかり凍り、その上にどっさりと雪が降り積もるボストンの冬ですが、今年は暖冬で、岸辺すら凍る気配もないまま春を迎えようとしています。リス達もまた可愛らしい姿を見せ始めてくれました。

雪景色の頃にと思いながら冬も終わりかけになってしまったのですが・・遅ればせながら、またバークリー音楽院での、今回は基礎的な授業のことを書かせて頂きます。

7. 授業内容―基礎科目

バークリー に入学すると全員、Ear Training、Arrangement、Harmony等、基礎となる授業のレベル分け試験を受けます。レベルは4段階あり、レベル4まで終えるとその先、更に踏み込んだ内容の基礎クラス群を自由に選択できるようになります。例えばEar Trainingですと、world musicの聴音、jazz即興の聴音、無調音楽の聴音などのクラスがレベル別クラスの向こうに楽しそうに揃っているのです。

◆Ear Training
Ear Trainingは、日本でのソルフェージュ全般に該当する授業で、ハーモニーを音ではなくコードネームで書き取ったり、メロディを移動ドで歌ったり、初めて尽くしのことも色々ありました。何より苦心したのは移動ドでの視唱で(それも、音階をDo-Di-Re-Ri-Mi-Fa-Fi-So-Si-La-Li-Ti-Doと、独特の音名で歌うのです)、 ジャズや即興演奏などで相対音感を培ってこられた学生さんは見事にスラスラ!試験前、何度も練習につきあってもらいながら、自分の音感が色々な意味で固定されすぎていたことを実感するのでした。他にはやはりジャズ中心に、変拍子や複雑なリズム打ちなどにもかなりの時間を費やします。

◆Harmony
バークリーでは和声は全てコードネームなので、Harmonyの授業でコードネームの基礎から始まり、ジャズの和声理論全般を学んでいきます。この授業で教会旋法を改めて勉強し直すことになり、それがどのようにジャズに結びついていくか、とても新鮮でした。この後には、Jazz Harmonyの様々なクラスの他、ブルース、ロック、ブラジル音楽、ビートルズなどのHarmony関連のクラスを選択することができます。バッハや近現代の音楽をジャズ和声で分析する授業もあったら、ぜひ受けてみたいと思いました。

アフリカ音楽のセッション

アフリカ音楽のセッション

◆Arrangement
この授業は、まずスウィングやブルース、ボサノバ、ビッグバンドなどの様々な形式と書法、リズムやベースのパターンを勉強しながら、ドラムの記譜法等も細かく学んでいきます。また、1つの楽曲の様々なアレンジを分析し、学期末には自分の選んだ曲を別のスタイルに書き換える課題に取り組みます。初級ではそれをコンピューターに打ち込んで音源を作りますが、次のレベルに進むと、ビッグバンドに実際に演奏してもらいます。

◆対位法
対位法も必修授業の大きな柱のひとつとなっていました。2声、3声の作曲やバッハ作品の分析、そして最後には4声フーガを完成させます。実は入学した時、ジャズがメインの音楽院で、こうした対位法を全員しっかり学ぶことが意外に思えたのですが、ジャズの即興演奏もたった一つの音素材をいかに変化させ、組み合わせ、その音素材を昇華させていくかということが基本になりますから、そう考えるといっそう興味深く、対位法の新たな側面を見ることができたような気がしました。基本の対位法のクラスを終えると、その後はJazz Counterpointや20th Century Counterpointなどのクラスに進むことができます。

◆初見/スケール他
全員、専攻するコースとは別に専攻楽器を選択し、個人レッスンやワークショップを受けます。ピアノですと、学期末の試験では自由曲2曲の他、スケール(教会旋法・長短音階)とアルペジオが課題となります。また初見が重用視されており、記譜された楽譜を弾くだけではなく、コードネームの初見、即興を交えての初見などの課題も出されます。

今日は、Rhythmic Ear Trainingという授業で取り組んだ、チック・コリアの「Fingerprint」という曲をご紹介させて頂きます。リズムパターンを書き取るという課題に四苦八苦しながらも、何度も楽しく聴き入りました。この授業の先生は現役のドラムプレイヤーの方だったのですが、曲が乗り移ったかのような、リズムを刻む先生の手足の動きに、クラスメートのお友達と目を見張ったものでした。

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三寒四温まっただ中の季節、もうすぐ桜の開花ニュースも届く頃でしょうか。どうぞ素敵な春の始まりをお過ごしください。

(2012.3.27. Mai Fukasawa)

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