深澤舞*ボストン便り(8)

クリスマスマーケット

クリスマスマーケット

ボストンも街中がクリスマスモードになって賑わっています。来週あたりからお天気予報に雪マークが出始めました。いよいよまた零下の世界がやってきます。

間があいてしまいましたが、またバークリー音楽院の続きを書かせて頂きます。(※前回の文章ははこちら

 

4. Project Band
入学試験のオーディションは、 奨学金の選考も兼ねられています。そして、奨学金を受け取る学生さんは、実技で学校に還元することが求められます。例えば学内のオーディションの伴奏やバックバンドでの演奏、学校主催のコンサートに積極的に出演することなど。そして、Project Bandのメンバーとなることも、そのひとつです。自作曲(編曲)作品を録音して提出する授業課題も多いのですが、自分で友人を集めて演奏してもらう以外に、このProject Bandに予約を入れて演奏してもらうことができます。日替わりで弦楽四重奏、小編成のバンド、ビッグバンドなど様々な編成のグループが待機していて、録音はMusic Engineeringを専攻している学生さん、指揮と進行は先生がして下さいます。2時間の枠の中で毎回10作品ほどが演奏・録音されるのですが、試験期間前は20作品近くなることも!普段は1度さっと通してから録音なのですが、混んでいるともうぶっつけ本番ですので、いかに初見でハイレベルな演奏を録音してもらえるか、提出するスコアとパート譜の完成度や、自分の希望を演奏者に伝えるコミュニケーション能力も問われます。
ボストンに来る前に留学していたイギリスの音楽院では、年間の作曲スケジュールがしっかり決まっており、作品が仕上がる時期になると、初演されるコンサートとリハーサルの日程、演奏者が学校から伝えられました。指定された日時にリハーサル室に行き、顔合わせと音出しが始まるのですが、リハーサルには先生も同席していらして、リハーサルの進め方などにアドバイスを下さいます。初対面の演奏者の方達と、限られた時間内でいかに濃密なリハーサルを進めるか、試行錯誤の連続でした。バークリーのProject Bandと形は異なりますが、こうして初演して下さったイギリスの学生さん達も、音楽院から選抜されていたり、自主的に初演に関わる登録をしていたりしていて、かなり多くの演奏専攻の学生さんが作曲科生の新作初演に携わるようになっている、興味深いシステムでした。

バークリーのメディアセンター

バークリーのメディアセンター

5. コンピューター
イギリスの作曲科の学生さんは、Sibelius(イギリスではFinaleよりもSibeliusの方が主流でした)を使いこなせていて、大学の課程でそうした音楽ソフトをしっかり勉強してきているようでした。(当時8人の同級生のうち、手書きの譜面を提出しているのは私だけで、「自筆譜だ!」と驚かれました) バークリーでは、入学すると全員MacBookと指定の音楽ソフトを購入し、Music Technologyという授業で、Finale、GarageBand、Logic、Reasonなどのソフトや、録音・編集などについての基礎的なことを学びます。アメリカの学生さんもやはり、早くから様々なソフトに慣れ親しんでいるようでした。

6. 学校生活
いくつかの建物に分かれた校舎で、夕方までは授業やレッスンが行われ、その後は0時に閉まるまで練習やセッションの予約で部屋は満杯です。図書室やコンピュータールームも遅くまで開いていて、夜の静かな図書室によくお世話になりました。帰りがけに階段を下りていくと、踊り場でゴスペルのグループが練習をしていて、そのレベルの高さに驚き、しばし階段の陰に座って聴き入ったものでした。学生さん同士でバンドやグループを組んでの活動もたくさんあり、卒業後そのまま世界的に活躍することになるグループも出てきます。ジャズはもちろんのこと、教会音楽、ゴスペル、出身地ごとにアフリカ、アジア、インドなど自国の民族音楽、オーケストラもクラシック、ジャズ、ゲーム音楽、ミュージカルなど様々です。中でも、Rhythm Of The Universeという、90カ国の学生さん達が集まっての大きなプロジェクトがあり、シンフォニーホールでの演奏会でも大成功を収めていました。今日はその映像をご紹介させて頂きます。

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もうすぐ水面が凍ります

もうすぐ水面が凍ります

次回は、年が明けてきっと一面雪となったボストンから、授業内容のことなど引き続き書かせて頂きます。少し早いですが、今年も遠方より、寄稿という形で現音に参加させて頂きありがとうございました。どうぞ皆さま暖かくなさって、素敵なクリスマスと新年をお迎えください♪

(2011.12.10. Mai Fukasawa)

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