第38回現音作曲新人賞受賞の言葉〜田中弘基

この度、第38回現音作曲新人賞を受賞いたしました、田中弘基と申します。

まず、今回拙作を受賞作に選んでくださった審査員の森田泰之進氏、新垣隆氏、福井とも子氏、そして初回のリハーサルから、作曲者の意図を次々と的確に読み取り、演奏をしてくださったフルートの木ノ脇道元氏、チェロの松本卓以氏に心から感謝申し上げます。私にとってこの賞は、本選にノミネートしていただくこと自体、長期的な目標であっただけに、正直に申しましてここまで早く「受賞」という結果をいただけたことに当初は喜びよりも困惑の気持ちが大きく、なかなか実感も湧きませんでしたが、このような賞歴というのは結果の良し悪しに関わらず一過性のもので、これで今後の人生が決まるわけでもないのでしょうから(せっかくのこのような場で適切な言い方ではないかもしれませんが)、今はあくまで、今回のことは今回のこととして素直に喜べばそれでいいのだと自分に言い聞かせています。

演奏会当日のプログラムノートには作品について小難しいコンセプトばかり書き連ねておりましたので、ここでは作品の成立について少しばかり書かせていただけたらと思います。
もともと受賞作は弦楽三重奏として書き始めたものでした。しかし着手から数週間経っても、自分の書いている音に実感が湧かず、いつしか頭の中ではフルートとチェロの音が鳴るようになりました。その時点で締め切りまで本当に時間がなく、丸1日逡巡した挙句、リスクを冒してでも編成を変えるべきだとの結論に至り、元のアイディアを活かしつつ短期間で集中して仕上げました。
ピアノ以外での旋律楽器のデュオというのは、二つの線、特に今回私が採用したフルートとチェロといった編成ですと外声のみが剥き出しになった状態が続くということで、編成を変更したらしたでかなり苦戦しました。結果として現時点での技術や表現の限界を思い知らされることにもなりました。今後に活かしたいと思います。

作品最大の反省点としては、講評で審査員長の森田氏がおっしゃっていたように、音楽としての目新しさにやや欠けたところかと思います。「コンクール」であることを意識するあまり、「守り」に入ってしまった感は否めず、今後は月並みの表現ですが「自分の音」を探していきたいと思います。
そして今後より多くの方に、拙作を聴いていただける機会が増えるようにこれからも精進してまいります。

改めましてこの度は本当にありがとうございました。

 

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