現音作曲新人賞・山本雄一さんに聞く「親しみやすい現代音楽」

第31回現音作曲新人賞本選会ゲネプロの様子

第31回現音作曲新人賞本選会ゲネプロの様子

 

同世代の仲間たちと“親しみやすい現代音楽”を目標に自主企画開催!

 

日本現代音楽協会(現音/以下G)2014年に現音作曲新人賞を受賞した「あの曲」を、3月19日にご自身が企画するコンサートで再演されるそうですね!現音も後援させていただいていますが、今回のコンサートについて教えて下さい。

第31回現音作曲新人賞山本雄一さん

第31回現音作曲新人賞山本雄一さん

山本雄一(以下Y)はい。芸大作曲科の友人達と共に演奏会を3月19日に企画しているのですが、今回は出来るだけ多様な作品を集めて発表してみようと思い、その音楽のコレクションを「展覧会」のように楽しんで頂きたく、MUSE EXPO 2015というタイトルにしました。
また、今回の演奏会では“親しみやすい現代音楽”の提供を目標としていまして、その実現の為に、ステレオタイプ的な現代音楽に凝り固まらないのは勿論の事、演奏会全体を「五感」で楽しむことが出来るような仕掛けを様々に施しています。ですので、「現代音楽なんか嫌いだ!」という方にこそ、是非ご来場して頂きたいと考えております。

G 2台のピアノを3名で演奏するあの作品、新人賞本選会では東京音大の教授も務める藤原亜美さん・菊地裕介さん・篠田昌伸さんが初演しましたが、今回は同世代の仲間が再演しますね。

Y そうですね。今回の演奏については、学生であるという事も勿論大きな違いなのですが、更に言うと、今回のピアニストは実は3人とも作曲科の学生なのです。
初演の演奏者では篠田さんも作曲家であられますが、今回は全員、歳の近い作曲家ですので、ライバルに作品の稚拙な部分を細かく読まれている気がするとなんだか少しプレッシャーには感じます。
ただ、やはりみんな作曲家ですので、「どのように弾くと作曲者の表現したいことが表現出来るか」ということを主観的に捉えてくれるのではないかと期待しています。

11068352_1068226219860519_1907287802_oG 今回の企画には現音の理事でもある三枝成彰さんからメッセージを頂いていますね。三枝理事は2007年度に現音の芸術監督を務め、年間テーマとして「芸術音楽に大衆性は必要か!?」というテーマを打ち出しました。そのテーマを元に現音会員の作曲家が新作を作曲し、それこそ今回の山本さんの新曲のように、初音ミクを使った作品もありました。今回の“親しみやすい現代音楽”というテーマはどういった思いや気持ちを持って臨まれていますか?

Y こんな事を言うと怒られてしまうかもしれませんが、今回あえて“親しみやすい現代音楽”を目指したのは、私自身「理解されなくて良い」、あるいは「理解しない聴衆が悪い」という態度や風潮に疑問を感じたからです。
「理解され、楽しまれること(エンターテインメント)」を第一義として創作することは芸術としての本質から乖離するとは思いますが、しかしそれは「理解されたら芸術ではない」とは結びつきません。
正直に言うと、分かりやすさや親しみやすさはそんなに大きな問題ではありません。ただ、私達七音会の提供するMUSE EXPO 2015は、聴衆に理解され、鑑賞される可能性を最後まで捨てません。
今回来場される全てのお客様に、どれか一曲でも気に入って頂けるよう、七音会一同、“総力戦”で制作致します。

G 2015年度の現音作曲新人賞は「弦楽四重奏」が募集テーマで、前回の「ピアノ」もそうですが、歴史的にも名曲が多いです。新しい世代の作曲家がどんな表現を生み出してくれるかとても楽しみですが、山本さんにとって弦楽四重奏というとどういうイメージでしょうか?

Y 私にとって弦楽四重奏という編成は、生まれて初めて書いた現代音楽の編成であり、とても特別な物です。
その作品は2年ほど前の物なのでそんなに古い過去ではありませんが、今から聴き返すと耳を覆いたくなるような稚拙さです。しかしながら、聴き返す度に、自分の作品に流れる精神性は処女作から変わらないことを再確認し、自分の創作の道しるべとなっています。いつか機会を見つけて、またこの編成で成長した自分の音楽を書こうと思います。
2015年度の現音作曲新人賞をとても楽しみにしています。

G 弦楽四重奏作品も含めて、今後の活動を楽しみにしています!ありがとうございました!

 

2015年度第32回現音作曲新人賞募集要項はこちら

 

MUSE EXPO 2015
2015年3月19日(木)18:30開演(18:00開場)
葛飾シンフォニーヒルズ「アイリスホール」京成線「青砥」駅下車

11071859_1068226213193853_1942556717_o中島夏樹/Alpha (Marginal mix)
橋本歩実/水彩クレパス for guitar and marimba
藤川大晃/『倭をぐな』による4つの歌、Space(s)
山中麻鈴/Clown
山本雄一/2台のピアノと3人の奏者の為のコスモフォニー、ミクリズム
水上颯葵/色香馥郁たる内に
浦部雪(作曲、指揮・会員)/Réflexion

出演:長谷川道将(尺八)八木瑛子(フルート)石井智章(オーボエ)田村知子(クラリネット)石井野々香(ファゴット)上野耕平(サクソフォン)山田唯雄(ギター)濱野杜輝(バリトン)善養寺彩代(ピアノ)松岩沙季(マリンバ)沓名大地(打楽器)石井智大・原田真帆(ヴァイオリン)對馬時男(ヴィオラ)三谷野絵(チェロ)中島夏樹(DJ)他

チケット:前売 1500円/当日2000円(全席自由)
イープラスで購入

▼お問い合わせ
museexpo2015(a)gmail.com
070-6966-5319(代表:浦部)

主催:七音会
後援:日本現代音楽協会、日仏現代音楽協会、日本芸術連盟、club willbe、ヤマハ音楽振興会