「ペガサス・コンサート Vol.VIII」リサイタル企画&主演者募集!

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フォーラム・コンサート レポート

現音 Music of Our Time2025のフォーラム・コンサートは、
11月27日と11月28日の2夜にわたり開催されました。
今回は出品者のレポートをお送りいたします。

 

生けるすべてのものを根底的に呪縛するエゴイズムに抗する音楽こそ!

-当協会主催の直近のコンサートに参加して

                                                       第1夜出品者 ロクリアン正岡

現代音楽といえば、人気曲は別として、作曲者の特徴ある限定的なコンセプトがまずあって、それが受容者に特定認知されるかどうかで、その価値が計られるもののようだ。12月3日の42回現音作曲新人賞本選会ではそのことが鮮明に示されていた。

一方、F・C第一夜はこの分野にして珍しいほどに人間として普段からの言いたいことを自身の“音楽的嗜好”によって具現されているものが多かった。

 楽譜は専門家同士の作曲意図の伝達には音楽以上に便利なツールだろう。しかし楽譜は設計図やレシピのようなものであって建築物と食事がそれらと全然違うように音楽とは全然違う。

建築物は様々であるが、基本、中に身を置いても対象視しても心地よいものでありたい。食べ物 もまずは美味しく消化しやすく栄養になるものでありたい。

芸術体験は、ここでは音楽に絞るが、耳にも心にも気持ちよく良い時間を過ごした、と思えることが基本だろう。

そのうえで、得難い何か、不可知な何か、があるようで、自ずからそれを確かめたく繰り返し聴くことで、何か価値ある領域が開けてくると同時にその先へと問いが伸びてゆくという循環発展運動が生じるものでありたい。

だから拙作「南無阿弥陀仏No.2“ああ、極楽浄土”」はユーチューブに投稿し公開させていただく(遅くとも2026年4月)。 

動物と違って人間は己が死ぬことを知っている。その上で「死んだらそれっきりだ」とか「死後なんて考えても成るようにしかならない」という方々も少なくないだろう。ともかく人生をおしまいにしたくないから死を避ける行動をとり続けるのが普通の態度/姿勢だ。

だが、「死後は無だ」というのは誤謬!だろう。それは死んでも時間は与えられていて無を体験できる、としているからだ。体験があるなら自分があってのこと。

要するに、「死後も自分のこと」という限定で考えているとは、これ究極のエゴイズムだと私は思う。

音楽の本務は、そんなエゴイズムからの解放だ、というのがこの年80歳になって到達した私の作曲理念だ。

日本は仏教の影響が濃いから「死ねば輪廻転生のサイクルに乗せられ次の生を受ける」と思う方々も多いだろう。だからこそ、そこから脱却して仏の国/浄土で落ち着きたい、という方々もおられ、またそういう宗教宗派が古くから実在しようというものだ。

いずれにしても、この宇宙に限らず、存在するすべての事象を取り仕切る「存在そのもの」ということが考えられるが、その極点、いわば台風の目のようなものが浄土の領域なのではないか?

クラシック音楽の御三家の楽曲にはそのような雰囲気があるし、サンサーンスの「白鳥」など実に分かりやすい例だと思う。

私はかねてより音楽の真の現場は鑑賞にあると思っている。その為には音の有無による現象が与えられねばならないし、そのためのシステムがなければならない。人の心身を幸福にするために用意される薬が作曲と演奏の協働で作られるのだ。その本質はすでに「他力」活動であり、そこにおける「自力」はその助役のようなものだ。

いずれにしても音楽は鑑賞者に浄土の雰囲気を齎せる可能性があり「もしかしたら浄土って本当にあるのかもしれないし、そこに行きたいものだ」と思わせる能力も本来持っていると思う。ただしそういう音楽を何度も信受したからと言って死後実際に極楽浄土へ行けるとまでは思わない。

ところがある宗教は「日々、本当に心から信じて『南無阿弥陀仏』と念じたり唱えたりすれば極楽浄土へ行ける」と主張する。だが、死後の実際はどうなのだろうか。

これは最も奥の深い問題の一つであろう。そして、死んだら必ずわかるというような簡単なことですらないように思えるのだが、読者のお考えは?

とにかく、耳も喉も手も頭もある事物があってそれがなんと自分であり人間みんなである。だから音楽も与えられ当然ながら世界に包まれている。それだけで出来すぎた事実/現実である。しかし、それらは別に浄土や仏ほどのものと比べなくても中途半端な生き物でありはたまた世界でもある。音楽にはそれを超える潜在能力があるのかもしれない。そこのところをもっともっと知りたい。ああ!

 
 
フォーラム・コンサート レポート                 第1夜出品者 田中範康
 
フォーラムコンサートでは、自由出品が大きな魅力です。
例年、様々な年代の方が、それぞれ独自のスタイルの作品を出品されますが、今の時代だからこそ実現可能になった音楽作品の多様化を物語っている作品コンサートであるとも言えます。
私が参加させていただいた第1夜においても、このことが象徴されているコンサートであったとの印象をもちます。
今後も、フォーラムコンサートのように、作曲家自身が信じる、素直で率直な世界観のもてる、自由な作品発表の機会が継続されることを強く願っています。
 
 
 

フォーラム・コンサート第2夜を終えて              第2夜出品者 松波匠太郞

フォーラム・コンサー 第2夜に出品させていただきました。入会させていただいた2021年以来の参加で、久々のフォーラム初演や共演をひたすら楽しみに、常に前向 きな気持ちと勢いで作曲することができました。編成はフルートと三味線のデュオで、先の勢いそのまま、元気な作品が出来上がったように思います。プログラムノートにも記した雅楽の「乱声」から、そのポリフォニーを自作に持ち込んでみたいという発想と、自身が学ぶ三味線で、表現の限りを尽くした熱い作品を書いてみたいという思いが一つとなり結実、誕生した本作です。

フルートの尾藤あづみ氏は桐朋学園の学生で、和声や作品分析、室内楽実技など、自身から様々を吸収してくれた若手奏者です。2021 年の初演も桐朋の学生たちによるものであったことも思い出され、今回演奏を託しました。こちらのあらゆる要望に真摯に向き合い試行錯誤し、本番では素晴らしい演奏を披露してくれました。若さ溢れるパフ ォーマンスは可能性に満ち、これからが楽しみなアーティストです。

三味線の本條秀慈郎氏は言わずと知れた、現代音楽の世界的プロパーであり、今回も作品を実際のそれ以上のものにして下さいました。氏がメンバーとして在籍する邦楽器による演奏団体 J-TRAD Ensemble MAHOROBA の皆さんに、昨年度末新作を初演していただきました。大編成ならではの発想で書かれた前作では達成できなかった、三味線の 緻密な表現や技法を、今回はなんとか盛り込めたように思います。合わせの中でも勉強させていただくことが多く、頂戴したアイデアは自身を前進させ、また演奏ではフルー トを常に引っ張り、そして本番を成功に導いて下さいました。

共演させていただいた出品者の皆さんの作品はどれも個性的なものばかりで、たくさんのアイデアを得ることができた充実の第2夜本番でした。これらの個性を絶妙にプログラムして下さった現音役員の皆さまにも、改めて感謝いたします。どの作品も鮮明に記憶され、個々の感想を述べたいところですが、それは作家同士個別での対面が叶った際にとっておくこととします。その対面と次回の出品を楽しみにまた、精進して参ります。

第42回現音作曲新人賞 及び 全音賞に浦野真珠さん。松平頼曉作曲賞、聴衆賞も受賞

前列左から、劉昊桐(入選)、浦野真珠(第42回現音作曲新人賞 及び 全音賞/松平頼曉作曲賞/聴衆賞)、近持亮平(入選)、上岡丈晃(入選)。後列左より、松尾祐孝日本現代音楽協会広報室長、渡辺俊哉審査員・日本現代音楽協会事務局長、徳永崇審査員長、河添達也審査員、北爪道夫日本現代音楽協会副理事長。

特定非営利活動法人日本現代音楽協会(理事長:北爪道夫)は、2025年12月3日(水)18:45より、東京オペラシティリサイタルホールに於いて〈現代 Music of Our Time 2025〉「第42回現音作曲新人賞本選会」(審査員長:徳永崇、審査員:河添達也渡辺俊哉)を開催し、譜面審査会において入選した4作品の演奏審査を行いました。
厳正な審査の結果、浦野真珠(うらの・まみ/2002年生まれ)さんの《ヴィーナス・フライトラップ -2人の弦楽器奏者とフルート奏者のための-》が2025年度「第42回現音作曲新人賞」に選ばれました。また、新人賞受賞作品には全音楽譜出版社提供の「全音賞」が授与され、褒賞として、全音楽譜出版社より出版する権利が与えられます。既に、2023年に逝去された松平頼曉日本現代音楽協会名誉会員の遺贈による基金から、審査員が特段に優れていると判断した作品に授与する特別賞「松平頼曉作曲賞」(賞金10万円)にも浦野真珠さんの作品が選ばれました。また聴衆賞にも浦野真珠さんの作品が選ばれました。
演奏、審査に続いて表彰式が行なわれ、北爪道夫理事長より賞状と賞金15万円が授与されました。
なお、2026年度の「第43回現音作曲新人賞」は、北爪道夫日本現代音楽協会理事長が審査員長を務めます。募集テーマや募集要項は2025年1月頃に発表します。

※応募総数25作。一次審査(譜面審査):2025年9月15日(月)

第42回現音作曲新人賞本選会結果
2025年12月3日[水]18:45開演 東京オペラシティリサイタルホール

■第42回現音作曲新人賞 及び 全音賞
賞状、賞金15万円
浦野真珠(うらの・まみ)
《浦野真珠/ヴィーナス・フライトラップ -2人の弦楽器奏者とフルート奏者のための-》
【演奏】甲斐史子(ヴァイオリン)安藤裕子(ヴィオラ)木ノ脇道元(フルート)

浦野真珠(うらの・まみ)福島大学人間発達文化学類 芸術表現コース卒業。現在、愛知県立芸術大学 大学院博士前期課程作曲領域 1年に在籍中。サントリーホールサマーフェスティバル2024 フィリップ・マヌリの公開作曲ワークショップに作品が選出される。武生国際音楽祭2025 若手招待作曲家。

入選(表彰状)
上岡丈晃/ Regeneration for Flute, Clarinet, and Viola
近持亮平/ Share the Space for Saxophone (Alto, Baritone) and Contrabass
劉昊桐/ Endless クラリネット、ヴァイオリン、ピアノのために

松平頼曉作曲賞(賞状、賞金10万円)
浦野真珠/ヴィーナス・フライトラップ -2人の弦楽器奏者とフルート奏者のための-

聴衆賞(賞状)
浦野真珠/ヴィーナス・フライトラップ -2人の弦楽器奏者とフルート奏者のための-

※入選者は本選演奏順に記載してあります。全作新作初演。

〈現音 Music of Our Time 2025〉開催!コンサート、コンクール、レクチャー、ノーノの日本初演作品も上演!!

 

●サテライト企画
レクチャーSeries 新しい創造の扉
生成AIとの共存に向けて

2025年1012日(日)11:30開場 12:00開演
会場:洗足学園音楽大学 アンサンブルシティ棟C301教室

●12:00〜口頭発表・事例報告
●14:30〜シンポジウム

【出演】 音声合成研究:嵯峨山茂樹 作編曲家:小川類
クリエイター:太田雅友 AI研究:大谷紀子・安藤大地
音楽プロデューサー:白柳龍一 建築家:黒木正郎
法律家:張睿暎 進行:松尾祐孝(日本現代音楽協会会員)

【共催】日本AI音楽学会

入場無料・要予約(配信無し)⇒ 開催前日までに 80th@jscm.net 宛にメールでご予約ください。関連資料を事前にメールでお送りする場合があります。

 

●サテライト企画
レクチャーSeries 新しい創造の扉
管弦楽スコアの読み解き方(続)

2025年111日(土)14:30開場 15:00開演
会場:洗足学園音楽大学 アンサンブルシティ棟C210教室

【出演】
山内雅弘(作曲家・日本現代音楽協会理事)
森垣桂一(作曲家・日本現代音楽協会理事)

日本現代音楽協会の作曲家・山内雅弘と森垣桂一が、クラシックや日本のオーケストラ作品を題材に、そのスコアから作品を読み解き、深掘りします。オーケストラ音楽や現代音楽に興味がある方、演奏に取り組んでいる方、作曲を志す学生など、どなたでもご参加可能です。

入場無料・要予約(配信無し)⇒ 開催前日までに 80th@jscm.net 宛にメールでご予約ください。関連資料を事前にメールでお送りする場合があります。

 

フォーラム・コンサート 第1夜
2025年1127日(木)18:15開場 18:30開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール

1.近藤浩平/ピアノソナタ第3番「アメリカの爆弾」作品236(作曲2024年)
清水友美(ピアノ弾き語り)

2.中辻小百合/新作(作曲2025年初演
佐藤まどか(ヴァイオリン)若﨑そら(マリンバ)

3.ロクリアン正岡/南無阿弥陀仏No.2「ああ、極楽浄土」—テノールとクラリネット、バイオリン、チェロ、ピアノによる(作曲2008年 改訂2025年改題初演
平野太一朗(テノール)白小路紗季(ヴァイオリン)下島万乃(チェロ) 岩瀬龍太(クラリネット)川村恵里佳(ピアノ)

4.植野洋美/地球温暖化と私たち —ピアノのための(作曲2025年初演
植野洋美(ピアノ)

5.浅野藤也/弦楽四重奏のための音楽(作曲2025年初演
亀井庸州・加藤綾子(ヴァイオリン)甲斐史子(ヴィオラ)松本卓以(チェロ)

6.田中範康/森の静寂の中で(作曲2025年初演
佐藤まどか(ヴァイオリン)松山元(ピアノ)

7.松岡みち子/見知らぬ国のうた(作曲2023年 改訂2025年改訂初演
小川明子(アルト)

8.河野敦朗/新作(作曲2025年初演
石山聡(ピアノ)

9.横山真男/黄金比調弦によるヴィオラ・チェロ・コントラバスのための三重奏曲(作曲2025年初演
甲斐史子(ヴィオラ)北嶋愛季(チェロ)布施砂丘彦(コントラバス)

●座席券:4,000円ネットで購入
●インターネット視聴券:1,500円ネットで購入

 

フォーラム・コンサート 第2夜
2025年1128日(金)18:15開場 18:30開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール

1.くりもとようこ/臆病な自尊心と尊大な羞恥心(作曲2025年)
豊田庄吾・伊藤文嗣(チェロ)

2.堀切幹夫/From Winter to Summer(作曲2014年初演
カルテット・レオーネ:佐原敦子・小杉結(ヴァイオリン)阿部哲(ヴィオラ)豊田庄吾(チェロ)

3.三宅康弘/らんちう狂詩曲 —ヴァイオリン独奏のための(作曲2025年初演
佐藤まどか(ヴァイオリン)

4.早川和子/道 〜独奏チェロのための〜(作曲2025年初演
苅田雅治(チェロ)

5.河内琢夫/《ニライカナイ民族組曲》〜メタル・ガムランとピアノのための(作曲2023年)
町田志野(メタル・ガムラン)小笠原貞宗(ピアノ)

6.露木正登/セレナードIII 〜バセットホルン、洞簫、笛子とピアノのための(作曲2025年初演
鈴木生子(バセットホルン)王明君(洞簫/笛子)及川夕美(ピアノ)

7.桃井千津子/The Lion’s Share 〜ソプラノとピアノのための(作曲2025年初演
川辺茜(ソプラノ)長井進之介(ピアノ)

8.松波匠太郎/乱声和同美武府 ~Run “Joie de vivre”(作曲2025年初演
尾藤あづみ(フルート)本條秀慈郎(三味線)

●座席券:4,000円ネットで購入
●インターネット視聴券:1,500円ネットで購入

 

第42回現音作曲新人賞本選会/現音会員小個展〜伊藤彰
2025年123日(水)18:30開場 18:45開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール

▼第1部:現音作曲新人賞本選会 全曲2025年作曲初演

1984年創設。新人作曲家の音楽的発言を重視し、その道を開くための作曲賞。審査は「妥協のない厳選」という主旨から、日本現代音楽協会理事会が選ぶ審査員長と、審査員長が指名する2名の審査員によって行う。審査員長は将来にわたって再選されない。今回の募集テーマは「弦楽器および木管楽器を中心とした二重奏、または三重奏作品」。

1.上岡丈晃/Regeneration for Flute, Clarinet, and Viola

2.近持亮平/Share the Space for Saxophone and Contrabass

3.劉昊桐/Endless クラリネット、ヴァイオリン、ピアノのために

4.浦野真珠/ヴィーナス・フライトラップ-2人の弦楽器奏者とフルート奏者のための- [vn, va, fl]

【演奏】
木ノ脇道元(フルート)菊地秀夫(クラリネット)大石将紀(サクソフォン)篠田昌伸(ピアノ)甲斐史子(ヴァイオリン)安藤裕子(ヴィオラ)山本昌史(コントラバス)

【審査員】徳永崇(長)、河添達也渡辺俊哉


▼第2部:日本現代音楽協会会員による小個展〜伊藤彰 弦楽器による作品を集めて

1.Sempre Trattenuto(作曲2019年日本初演
2.⼣べにすべてを⾒とどけること(作曲2020年⽇本初演・舞台初演
3.弱い紐帯の強さ(作曲2022年)

【演奏】亀井庸州・白小路紗季(ヴァイオリン)甲斐史子(ヴィオラ)松本卓以(チェロ)

●座席一般券:3,000円 ⇒ ネットで購入
●座席学生券:1,500円 ⇒ ネットで購入(入場時要学生証)
●インターネット視聴券:1,500円 ⇒ ネットで購入

 

ペガサス・コンサート Series Vol.VII
(1)木ノ脇道元(フルート)
「どーげんをプロデュース」をプロデュース〜21世紀フルート音楽を俯瞰する

2025年128日(月)18:30開場 19:00開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール
 
※このコンサートはサントリー芸術財団佐治敬三賞推薦コンサートです。

「どーげんをプロデュース」と銘打った演奏会のシリーズを2021年から始め4回を数えた。「木ノ脇の独演」という前提で毎回企画者にプロデュースしてもらう。今回の演奏会は過去4回の中から木ノ脇自身が選曲して再構成する。企画者が「フルート独演」という形に対してそのたび違った個性の光を当てるという二重構造だったプログラムに、今度は木ノ脇自身の視座から「フルートの新しい響き」というテーマで光を当てる。さらに次回5回目のプロデューサー山本裕之の委嘱作品や、ポッペの仕事と響き合う若き作曲家、渡邊陸の作品を入れ、個性豊かな作り手の魅力が乱反射するようなめめくるめくアンソロジーを目指す。

木ノ脇道元プロフィールはこちら

1.渡辺裕紀子
Komposition für einzelnen ton [fl, projecter]
作曲2024年キャビネット・オブ・キュリオシティプロデュース時新作

2.エンノ・ポッペ
フルートのための”17の練習曲、第3巻 [fl]
作曲2009年/福井とも子プロデュースから

3.稲森安太己
ゴルジ体 [b-fl]
作曲2022年/稲森安太己プロデュース時新作

4.ティエリー・ティドロウ
シェルター [picc]
作曲2019年/稲森安太己プロデュースから

5.ステファノ・スコダニッビオ
カルタヘナへの帰還 [b-fl]
作曲2001年/福井とも子プロデュースから

6.レジス・カンポ
フルートのための”スフィンクス” [fl]
作曲2002年/福井とも子プロデュースから

7.山本裕之
エンベッディング I
作曲2025年委嘱初演/第5回プロデュース予定

8.中谷通
1_1/128_1 [fl]
作曲2023年初演/鈴木治行プロデュース時委嘱作品

9.渡邊陸
フルートのための”クリスタル” [fl]
作曲2024年/木ノ脇による独自選曲

●座席券:3,000円 ⇒ ネットで購入
●インターネット視聴券:1,500円 ⇒ ネットで購入

 

ペガサス・コンサート Series Vol.VII
(2)飯野智大(打楽器)
Speaking Percussionist〜⾔葉とリズムが交錯する⾳楽〜

2025年129日(火)18:30開場 19:00開演
会場:東京オペラシティリサイタルホール
 
※このコンサートはサントリー芸術財団佐治敬三賞推薦コンサートです。

本公演は、打楽器と声を融合させた新しい表現を探るプロジェクトである。スイスと日本を拠点に活動する打楽器奏者・飯野智大が、身体と言葉、音と物語のあいだを自在に行き来しながら、語りと演奏が交錯する唯一無二の舞台を創り出します。アペルギスやチチリアーニといった現代音楽の巨匠に加え、日本・スイス・スペインから集った同世代の俊英作曲家たちによる新作が世界初演される本企画は、音楽と言葉の境界を揺るがし、国際的な視座から現代音楽の新たな可能性を照らし出します。前例のない「語る演奏」が、あなたの耳と想像を揺さぶります。

飯野智大プロフィールはこちら

1.ジョルジュ・アペルギス
Action avec son obligé for One percussionist(作曲1982/2014年日本初演

2.マルコ・チチリアーニ
Crash for Singing Percusionist(作曲2007年日本初演

3.向井 航
Alice Down the Punk Hole(作曲2025年委嘱初演

4.村上りの
新作(作曲2025年委嘱初演

5.飯野智大
木(Wood) for Voice and Broken Marimba bar, Live Electronics(作曲2025年初演

6.ヤニク・ソランド
新作(作曲2025年委嘱初演

7.ジェマ・ラゲス・プジョル
新作(作曲2025年委嘱初演

●座席券:3,000円 ⇒ ネットで購入
●インターネット視聴券:1,500円 ⇒ ネットで購入

 

ルイジ・ノーノ×イサオ・ナカムラ(指揮)
〜《Risonanze erranti》日本初演〜

2025年1223日(火)18:30開場 19:00開演
会場:日暮里サニーホール(JR、京成「日暮里」駅 南改札より徒歩1分)

渡独間もないイサオ・ナカムラとノーノが探し当てた“一番大きな音”とは?
その発見から一気に書き上げられたのが《Risonanze erranti》である。
2024年に生誕100年を迎えたノーノ。そして今年、生誕90年の盟友ラッヘンマン。
師弟の響きがここに交わる。(国際部「世界に開く窓」企画制作:福井とも子)

1.ヘルムート・ラッヘンマン/Interieur I (作曲1966年)
打楽器 高瀬真吾

対談 長木誠司×イサオ・ナカムラ

3.ルイジ・ノーノ/Risonanze erranti (作曲1986/87年)
指揮:イサオ・ナカムラ コントラルト:福原寿美枝
フルート:木ノ脇道元 チューバ:橋本晋哉
打楽器:大場章裕・大家一将・神田佳子・窪田健志・新野将之・藤井里佳
エレクトロニクス:有馬純寿

●座席一般券:3,500円 ⇒ ネットで購入
●座席学生券:2,000円 ⇒ ネットで購入(入場時要学生証)
●インターネット視聴券:3,000円 ⇒ ネットで購入

 

主催:特定非営利活動法人日本現代音楽協会(国際現代音楽協会日本支部)
助成:一般社団法人 日本音楽著作権協会 公益財団法人 三菱UFJ信託芸術文化財団
公益財団法人 花王芸術・科学財団(12/23) 芸術文化振興基金(12/23)
後援:一般社団法人 日本音楽作家団体協議会

フォーラム・コンサート第1夜 (11月27日)  出品作曲家プログラム・ノート

フォーラム・コンサート第1夜 (11月27日)  出品作曲家プログラム・ノート

フォーラム・コンサート出品作のプログラム・ノートを先行公開します。
作曲者によっては追加メッセージもあります。

「作品について」をお読みになると、聴く前から曲のイメージが膨らむのでは?
11月27日には、これらのメッセージが実際にどのように音像化されているかを確かめに、
是非とも東京オペラシティリサイタルホールまで足をお運びください‼

①  近藤浩平
ピアノソナタ第3番「アメリカの爆弾」作品236
(作曲2025年 初演)

第1楽章 可部から中島本町に行くんよね
第2楽章 誰の爆弾じゃろ
第3楽章 次はどこ行くんね

◎作品について
原爆関連の音楽は、被爆の描写で怖い音にしてしまいがちですが、この作品は、日常の広島弁の会話が進んでいく中で、原爆によって失われた人達の声、あったはずの人生が示唆されます。全楽章、広島弁の弾き語りになっています。
ヤナーチェクがモラヴィアのしゃべるリズム、抑揚で音楽をつくったように、この曲ではピアノだけが演奏する部分も含めて広島弁で音楽ができています。
広島弁を懐かしく聴きつつも、原爆によって失われたかけがえのないもの、おらんようになってしまった人達の生前の語りかける声が思い出されるような音楽になっています。
原爆で「おらんようになった人」が生きて暮して誰かに待たれていた人、誰かを待っていた人、一人一人の普通の街の人々であることを思いおこさせる音楽です。

プロフィール
ベルリン・ドイツ・オペラ<Klang der Welt Ostasien>作曲コンクール第2位(室内楽)。左手のためのピアノ作品は舘野泉氏、智内威雄氏をはじめ演奏機会が多い。震災の追悼作品「海辺の祈り」は世界各地で再演200回を越える。ギター、ピアノ、ヴィブラフォン、マリンバの協奏曲も発表。映画「にしきたショパン」でマドリード国際映画祭最優秀作曲賞。2026年東京国際ギターコンクール本選課題曲を作曲。http://koheikondo.com

 

②  中辻小百合
Node for Violin and Marimba
(作曲2025年 初演)

◎作品について
 タイトルは「結び目、縁、絡まり、接点、交点」等の意味を持つ。2人の奏者が、強固な結びつきを持って支え合ったり、時には互いが様子をうかがい合ったり、バラバラになったり、対峙し合ったり、といった様々なイメージを膨らませながら曲を展開させていった。また、2つの楽器の組み合わせから生まれる音色対比を、時には際立たせ、時にはうまくつなぎ合わせることを意識しながら作曲を進めていった。
 最後に、ご来場くださった会場の皆様、演奏してくださる佐藤まどか先生、若﨑そら様、運営の諸先生方、事務局の皆様に心より深く感謝申し上げます。

プロフィール
国立音楽大学作曲学科を経て、同大学院修士課程を首席で修了、併せて同大学院研究奨学金授与。同大学院博士後期課程創作研究領域修了。博士(音楽)。第78回日本音楽コンクール作曲部門第1位受賞、併せて岩谷賞(聴衆賞)および明治安田賞受賞。主な作品に、《消えていくオブジェ》(日本音楽コンクール第1位受賞作品)、《The Divided Self for Percussion and Orchestra》(国立音楽大学2010年度委嘱作品)、《The Smokers for Percussion Ensemble》(同2020年度委嘱作品)など。これまでに作曲をトーマス・マイヤー=F、福士則夫、北爪道夫の各氏に師事。現在、国立音楽大学講師。日本現代音楽協会、日本作曲家協議会、各会員。

 

③  ロクリアン正岡

南無阿弥陀仏No.2「ああ、極楽浄土」
ーテノールとクラリネット、バイオリン、チェロ、ピアノによる

(作曲2008年 改題初演2025年)

◎作品について
「自分の生はこの世だけのもので、以前も以後も完全な無だ」とはばかげた認識だと私は思う。大谷翔平の優秀さはこの世の生一発で実現するものではなく、いくつもの生を重ね磨かれてきたものだろう。

しかし私は輪廻転生も避けたい。たとえ次の生がこの世の自分よりも増しであるとしても、浄土行きこそ願いたいものである。そういえばクラシック音楽の最上級のものに聴き入っていると、題名や表現内容はどうであれ浄土の雰囲気がひしひしと感じられる。
浄土宗の法然や浄土真宗の親鸞は「南無阿弥陀仏/なむあみだぶつ」を信じて日々唱え続けることで凡夫も極楽浄土に迎えられると主張し、さらに親鸞は南無阿弥陀仏の本願力を他力としていただけばよい、とした。
藝術や文化にはいろいろなメディアがあるが、媒体としての音楽はまさに字の通り空っぽの子宮のようなもの。まずは作曲時の脳のあり様だが、諸力犇めき合う想念をも相殺させ如来のような穏やかな表情が楽曲に与えられるにはその空性/他力に与るほかない。
“元来が優しさに満ちた音楽”というものは浄土からの贈り物でなければ!私はこの音楽が彫刻ではなく仏像であることを願った。仏こそ浄土の主なのだから。
 しかるに音楽は楽曲だけでは成り立たない。この楽曲にふさわしい音響の外化とは?はたまた聴取とは?
 そして「極楽浄土」に於ける存在感覚とは?
(この楽曲の具体的な拍節構造や音素材、さらに存在論的意義についてはロクリアン正岡のHPにあります。)

◎追加アピール文
自分の死後は?
意識するしないにかかわらず、これは万人にとって切実な問題ではなかろうか。

強い信仰心で日々「南無阿弥陀仏/なむあみだぶつ」と唱えれば極楽浄土に行ける、とは浄土真宗の教祖、親鸞の教えである。己にとって「他力」である阿弥陀仏の本願力に与れ、と。
一方、音楽のメディア面の本質は限りない優しさ、限りない平和性だと思う。あの激しく奇抜な音楽で知られる作曲家ストラヴィンスキーも「そもそも音楽の雰囲気は女性的なものである」と言っている。

私は「南無阿弥陀仏」という志向原理/テーゼを得て、徹底的に「他力」に与ろうとした。常に未来から注ぎ込まれてくる良い風/楽音は聴く者にとって「他力」そのものだろう。
そうやって実現するあらゆる対立のないありよう。主体と客体の間にも、過去と未来の間にも、身と環境の間にも融和以外の何物もなく、ただただ健やかで気持ちの良い状態こそ、メディアとしての音楽の本然ではないだろうか。

 抽象的な話になってしまったが、幸いなことに“そのような状態”は生きとし生けるものすべての中にある。睡眠の快さ、母胎のなかの胎児の実感。
ただし、その奥には生死を超えた”大いなる領域“が厳然と存在しているに違いない。それこそ音楽メディアに担ってもらうべき第一義的なもの“浄土”ではなかろうか?(クラシック音楽の名曲には浄土を感じさせるところが少なくない。)
そのような想念の中、なぜか十一面観音が頭に浮かび「なむあみだぶつ」の七拍子との関係で7拍子と4拍子の二小節一組がこの楽曲の基本細胞として繰り返されることになった。

 使われている音はただ一種類の全音階七音(残る五音は全く参加せず)だが、この凸凹した拍節の障壁を無事に搔い潜ることで、この音楽は力強く自己形成してゆくのであった。

 ああ、極楽浄土                       2025.11.03 ロクリアン正岡 

 

④  植野洋美
地球温暖化と私たちーピアノソロのための
(作曲2025年 初演)

◎作品について
地球温暖化により私達を取り巻く環境は年々深刻化している。現代の豊かな暮らしが、その代償として次世代の人々にどのような劣悪な環境を残すことになるのか。いや、既に今の私達でさえ耐え難い猛暑、台風、大雨、大雪などといった過酷な気候変動に見舞われており、今後さらなる大禍となる。今や後戻りできないギリギリのラインだ。この作品では情景描写や現象説明ではなく、現象に対する作曲者の印象や内面に潜む感情を表現した。私たち一人ひとりに何ができるのか良く考えたい。

プロフィール
作曲で神戸女学院大学卒業、大阪音楽大学大学院修了、東京藝術大学大学院修了。音楽学でエリザベト音楽大学大学院博士課程修了、Ph.D.。神戸女学院大学音楽学部最優秀者クラブファンタジー賞、吹田音楽コンクール作曲部門1位、大阪音楽大学コンクール奨励賞、エリザベト音楽大学学長表彰、他受賞。国際ピアノデュオコンクール作曲部門、現音新人賞、他入選。フェリス女学院大学、エリザベト音楽大学他で作曲指導、東京かつしか作曲コンクール会長・審査委員長を務めた後、現在Coily合同会社代表、植野音楽塾塾長として後進の音楽教育と普及に注力。腱鞘炎予防のピアノ打鍵研究を行い、IEEE(米国電気学会)やISPS(国際演奏科学シンポジウム)、日本音響学会など国内外の学会にて研究発表。日本現代音楽協会、日本作曲家協議会、日本音響学会、IEEE他会員。若手5人と作曲家グループbébébaleineM結成、2026年10月22日(木)カメリアホールにて演奏会予定。

 

⑤  浅野藤也
弦楽四重奏のための音楽
(作曲2025年 初演)

◎作品について
4つの楽器のそれぞれの旋律が多様性を保ちながら対立することなく、お互いに寄り添って溶け合うようなイメージの音楽を目指した。

プロフィール
作曲を故浦田健次郎、ピアノを故庄子みどりの各氏に師事。2006年第17回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門入選、2008年第12回日本の音楽展•作曲賞入選、2009年第14回東京国際室内楽作曲コンクール第3位。2012年東アジアの現代音楽祭inヒロシマ、2014年東アジア音楽祭inヒロシマに参加。2020年2月OM-2公演舞台音楽を担当。

 

⑥  田中範康
森の静寂の中で
(作曲2025年 初演)

◎作品について
 私ごとだが、約20年前から毎月のように山梨県の清里高原を訪れている。
1980年代、駅前を中心に観光地化した街並みが、今ではその面影もなく、小海線の踏切を渡ると、そこには豊かな森が広がっている。
 清里の静かな森の中を歩いていると、標高1350mの高地であるせいなのだろうか喧騒とは程遠いい静寂の中に木々の様々なささやきが聞こえてくる。
本作品ではそんな森の中の空気感を、なるだけ素直に音にした作品である。
 ヴァイオリソロで開始する楽想と、途中で変化する少し早めのテンポの楽想が核となり全曲を構成している。

プロフィール
東京生まれ。国立音楽大学附属高校を経て、国立音楽大学作曲学科、並びに同大学器楽学科(オルガン専攻)卒業。昨品は、日本はもとよりドイツ、北欧、フランス、アメリカ、韓国、メキシコ、でのコンサート、音楽祭で広く紹介されている。 現在までに5枚の室内楽アルバムが、Vienna Modern Masters(VMM-2011 2036)や ALM RECORDS(ALCD-87, 103,136)でCDリリースされている。さらに、マザーアースより、室内楽作品の楽譜が出版されている。名古屋芸術大学並びに大学院で教授として長年の間後進の指導にあたった他、副学⻑、理事も務め、2024年3月に退職をした。 現在、愛知県文化振興事業団理事、日本現代音楽協会会員。

 

⑦  松岡みち子
見知らぬ国のうた
(作曲2025年 改作初演)

1.遠い遠い昔の時への望郷のうた
2.村祭り
3,子守唄

◎作品について
遠い遠いどこかの国には、口伝えで、昔から歌い継がれてきたうたがある。

その村の人なら、みんな誰でも知っているうた。それは、その土地にしかない独特なリズム、微妙な息遣い、歌い回しの音程の少し外れたような不思議な表情を持っている。

ずっと長い時の流れの中で受け継がれ、大事にしてきた村の宝物。

ふるさとの土の匂い、風の優しさ、水の輝き、あの丘に登って海から生まれる太陽を望む時の神聖な思い、お母さんの胸に抱かれた心地よさ、祭りの日にみんなで着飾って張り切って歌ううた・・・

そんな風変わりで、温かくて、懐かしい音楽を作ってみたいと思いました。

こんな曲に大胆にチャレンジをしてくださる小川明子さんに、心から感謝です。

プロフィール
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。デュッセルドルフ音楽大学留学。徳島県芸術祭最優秀賞受賞、東京国際室内楽作曲コンクール入賞、奏楽堂歌曲作曲コンクール入選。作品は日本の他、ヨーロッパ各地の音楽祭で演奏されている。「松岡貴史&みち子作品展」を東京、徳島、ハンブルグで9回開催。徳島文理大学講師、香川大学特命准教授、鳴門教育大学講師。徳島県立名西高校講師を歴任。日本作曲家協議会、日本現代音楽協会会員。

公式HP  作曲家 松岡貴史・松岡みち子の部屋 https://www.takashimichiko.com

 

⑧  河野敦朗
September
(作曲2025年 初演)

◎作品について
あらゆることを遮ることでそれ自体が成立するような、いくつかのモチーフを設定し、それらが、あらゆる物質や事態を含みながらそれ自体の質において発展し、生成と消滅を繰り返し、明滅しながら、様々な事態を形作っていく事を目指している。作品の初演に協力いただいたピアノの石山聡氏に、心から感謝いたします。

プロフィール
東京生まれ。東京芸術大学作曲科卒業。在学中より学外に作品を発表し、卒業と同時に発表した作品が朝日新聞・音楽誌等で好評を得てデビューとなる。その後日本現代音楽協会などで作品を発表する。ISCM国内選考作品「5人の奏者による小空間のための試み」、合唱曲「BLUE」(音楽之友社 出版)。大分県立芸術文化短大名誉教授。日本現代音楽協会、日本作曲家協議会所属。高槻音楽家協会会長。高槻市在住。

 

⑨  横山真男
黄金比調弦によるヴィオラ・チェロ・コントラバスのための三重奏曲
(作曲2025年 初演)

◎作品について
新しいハーモニーを提案するという研究的・実験的な意図で、黄金比で計算されたピッチで調弦された弦楽曲。通常の西洋音楽における音律(ドレミ)は、基となるなるピッチに3を掛けて生成されている。そのため整数比の倍音列なので心地よく響く。一方、この作品においては、その整数比3ではなく黄金比(約1.618)で順次音階を計算して導出しているので、どの音程も不協和音程となる。この音列生成システムの詳細は作者のHPや論文などで説明しているが、つまるところ各弦楽器奏者は開放弦をスマホアプリなどで指定の黄金比ピッチで調弦し、構成している音はすべて開放弦と自然ハーモニクスのみである(黄金比の音程は指で押さえて取ることはできないので)。
なお、黄金比というとその導出アルゴリズムとしてフィボナッチ数列が知られている。曲の長さや音価、テンポはこの数列の数値を用いており、さらに、コンピュータプログラムを用いて自動生成している楽章もある。ただし、自動的に出力された音を並べるだけでは面白くないのでアーティキュレーションや強弱は人間の手によって味付けをしている。
以上の説明だと、なんとも小難しい話ばかりではあるが、慣れてくると意外と聞くに堪えられない不協和な音楽ではないかもしれない。
曲は性格の異なる全8つからなるバガテル風。共通のA音で始まり、徐々に速く激しくなって頂点に達したところが黄金比による大きな分割点である。最後は水琴窟の中のような幻想的な終曲。

プロフィール
https://www.jscm.net/yokoyama_masao/