第33回現音作曲新人賞募集要項

第33回現音作曲新人賞 募集要項

審査員長:山本裕之 審査員:新垣隆・福井とも子

●テーマ:邦絃楽器

今回の現音作曲新人賞は、限定された種類の楽器、しかも日本の伝統音楽というある意味独特なバックグラウンドを背負ったものをテーマとしています。それを難しいと感じるか、だからこそ未踏のチャンスと捉えるか。柔軟な発想による面白い作品を期待しています。[審査員長 山本裕之]

●楽器編成:琵琶(薩摩・筑前)、三味線(細棹・中棹・太棹)、箏(十三絃・十七絃・二十絃)による独奏から三重奏、またはそれら邦絃楽器と洋楽器(一般的にオーケストラで使用される楽器)、もしくは他の和楽器を組み合わせた二重奏から三重奏。ただし打楽器は、和洋とも小規模なものに限る。前述以外の楽器を使用したい場合は事前に問い合わせの事。(青字2016年3月22日追記)

★作品募集に先立ち邦弦楽器についてのレクチャーを開催。詳細は要項下記。

●演奏時間:15分以内

●応募期間:2016年10月3日(月)~10月28日(金)当日消印有効

●応募資格:年齢、国籍は問わない。但し、過去の現音作曲新人賞受賞者、日本現代音楽協会会員は応募できない(準会員は応募可)。

●応募方法:下記提出物をまとめて送付または持参すること。

1. 応募作品総譜3部 ※総譜には作品名を明記し、作曲者名は記入しないこと
2. 応募申込用紙(ダウンロード、もしくは任意の用紙に以下の項目を記入)
(1) 氏名(日本字とローマ字両方で表記)
(2) 生年月日(西暦)
(3) 略歴(和文)
(4) 作品名(原題および英語表記)
(5) 及び作曲年(西暦)
(6) 作品解説(和文)
(7) 楽器編成
(8) 演奏所要時間(分秒)
(9) 住所、連絡先電話番号、FAX番号、E-mailアドレス
3. 返信用封筒:審査結果を通知します。長3型(235mm x 120mm)の封筒の表に応募者の住所、氏名を明記し、82円切手を貼付のこと)
4. 参加料(下記)振込用紙のコピー

●参加料:1曲につき1万円。振込手数料を負担の上、下記口座に振込むこと。
三井住友銀行 目白支店 普通 6360842 口座名義「日本現代音楽協会」

●応募先:日本現代音楽協会「現音作曲新人賞」係(下記参照)

●応募に際しての注意事項
a. 応募作品は公開演奏会に於いて未発表であること。
b. 一人が複数作品を応募提出することは可とする。
c. かつて当賞に応募した作品であっても、入選作でなければ再応募可。
d. 作品総譜には作品名のみを明記すること。応募者氏名や応募者が特定されるような文言は一切記載しないこと
e. 楽譜は、黒色の表記の鮮明なコピー、黒インクによるペン書きの表記、ノーテーションソフトを用いて作成しプリントアウトしたもの、それらのいずれかであること。
f. 一旦提出された楽譜の内容の変更や追加は認めない。
g. 万一の事故に備えて、作曲者は応募作品の控えを必ず保管すること。
h. 応募した資料は原則として返却されない。返却希望者は、予め返却費用を添えて、事前に申し出ること。
i. 一旦納入された参加料は、いかなる理由があっても返金されない。

●問合せ:要項の内容に関して不明な点は、文書(E-mail、FAX、郵送等)にて、日本現代音楽協会宛に問い合せること(氏名、連絡先を明記のこと)。

●審査:譜面審査により入選作品4曲程度を選出する(入選作品は2016年11月中にウェブサイトで発表。応募者には事前通知)。入選作品は下記の演奏会に於いて演奏し入賞作品を決定する。

〈現代の音楽展2017〉邦楽・絃楽プロジェクト(仮)
【日時】2017年3月3日(金)開演時間未定
【会場】渋谷区文化総合センター大和田6F伝承ホール
【演奏】吉村七重(箏)田原順子(琵琶)野澤徹也(三味線)藤高理恵子(琵琶)他
◎第1部:第33回現音作曲新人賞本選会
◎第2部:邦絃楽器へのアプローチ(日本現代音楽協会会員作品5作程度)

●表彰
⇒【現音作曲新人賞】同賞の第33回目の受賞者となり、表彰式において賞状と賞金15万円が授与される(受賞者複数の場合は分割授与)。また日本現代音楽協会に入会を希望する場合には入会審査が免除される。
⇒【富樫賞】審査員が富樫賞にふさわしいと判断した作品に贈られる審査員奨励賞。表彰式において、賞状と賞金10万円が授与される(受賞者複数の場合は分割授与)。

●発表:以上の表彰についての発表は、本選会終了時に行う。

 

●レクチャー

■Vol.1 琵琶編
日時:2016年3月20日(日)13:00~16:00
集合時間:13:00
会場:府中グリーンハイツ3号棟1階集会室
JR武蔵野線北府中駅下車徒歩8分京王線府中駅下車徒歩15分
府中市晴見町1-28

解説:田原順子(筑前琵琶)石田さえ(薩摩琵琶)
演奏協力:聚の会メンバー
司会:松尾祐孝(作曲家)

資料代=500円(事前予約推奨)

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■Vol.2 三味線&箏編
日時:2016年4月3日(日)13:00~16:00
集合時間:13:00
会場:洗足学園音楽大学 アンサンブルシティ棟5階 C501教室
東急田園都市線溝の口駅・JR南武線武蔵溝ノ口駅下車徒歩8分
川崎市高津区久本2-3-1

解説:森重行敏(現代邦楽研究所長)石垣清美(箏・十七絃)野澤徹也(三味線)吉村七重(二十絃箏)
進行補佐:松尾祐孝(作曲家)

資料代=500円(事前予約推奨)

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主催:日本現代音楽協会
協力:洗足学園音楽大学・現代邦楽研究所(4/3)聚の会(3/20)
予約・問い合わせ:日本現代音楽協会

 

▼申し込み・問い合わせ先
日本現代音楽協会「現音作曲新人賞」係
〒141-0022 東京都品川区東五反田2-5-7山市ビル501
Tel: 03-3446-3506 Fax: 03-3446-3507 E-mail: 80th (a) jscm.net ※(a)を@に変えて送信してください。
Web: www.jscm.net 開局時間:月〜金10〜17時(祝祭日除く)

現音レクチャーシリーズ「琵琶編」を3月20日「三味線&箏編」を4月3日に開催!

邦楽絃楽

日本現代音楽協会主催
レクチャーシリーズ 邦絃楽器

2017年3月3日(金)渋谷区文化総合センター大和田6F伝承ホールで開催する、日本現代音楽協会主催〈現代の音楽展2017〉「邦楽・絃楽プロジェクト(仮)」(第33回現音作曲新人賞本選会&絃邦楽器作品展)の作品募集に向けて、 琵琶・三味線・箏の楽器や奏法についての情報を提供するレクチャーを2回にわたって行います!

 

■Vol.1 琵琶編
日時:2016年3月20日(日)13:00~16:00
集合時間:13:00
会場:府中グリーンハイツ3号棟1階集会室
JR武蔵野線北府中駅下車徒歩8分京王線府中駅下車徒歩15分
府中市晴見町1-28

解説:田原順子(筑前琵琶)石田さえ(薩摩琵琶)
演奏協力:聚の会メンバー
司会:松尾祐孝(作曲家)

資料代:500円(事前予約推奨)
Facebookで参加予約

 

■Vol.2 三味線&箏編
日時:2016年4月3日(日)13:00~16:00
集合時間:13:00
会場:洗足学園音楽大学 アンサンブルシティ棟5階 C501教室
東急田園都市線溝の口駅・JR南武線武蔵溝ノ口駅下車徒歩8分
川崎市高津区久本2-3-1

解説:森重行敏(現代邦楽研究所長)石垣清美(箏・十七絃)野澤徹也(三味線)吉村七重(二十絃箏)
進行補佐:松尾祐孝(作曲家)

資料代:500円(事前予約推奨)
Facebookで参加予約

 

主催:日本現代音楽協会
協力:洗足学園音楽大学・現代邦楽研究所(4/3)聚の会(3/20)
予約・問い合わせ:日本現代音楽協会
電話:03-3446-3506 E-mail: gen-on1930(a)jscm.net ※(a)を@に変えて送信してください。

現音レクチャーシリーズ「エレクトロニクスを知る(1)」講師:有馬純寿 3月5日開催!

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日本現代音楽協会主催
レクチャーシリーズ エレクトロニクスを知る(1)

日時:2016年3月5日(土)18:30
会場:きゅりあん4F第1特別講習室 JR京浜東北線・東急大井町線・りんかい線、大井町駅 徒歩約1分

講師:有馬純寿

 

第1回 入門編

<1. 音響技術の基礎知識>
マイクの種類や曲に応じた使い方、スピーカーの特性や再生チャンネル数、ミキサーの各部の機能や具体的な活用法、実際のコンサートでの 使用のポイントなど音響機器の基礎 的な知識を解説します。

<2. 各種エフェクトや音響加工の実例>
ディレイやリング・モジュレーターといった、電子音楽の初期から現在に至るまで使用されている音響加工法から、最近のコンピュータ を使用したリアルタイムの音響処理までを、 実際に音を聴きながら紹介していきます。

 

第2回は既存の楽曲を用い、初期から現在に至るまでの電子音響の使用法について迫る予定です。

 

受講料:800円(事前予約推奨)
お問い合わせ:日本現代音楽協会
電話:03-3446-3506 E-mail: gen-on1930(a)jscm.net

Facebookページで参加予約

 

有馬純寿(ありますみひさ)プロフィール
1965年生まれ。エレクトロニクスやコンピュータを用いた音響表現を中心に、現代音楽、即興演奏などジャンルを横断する活動を展開。ソリストや東京シンフォニ エッタなどの室内アンサンブルのメンバーとして多くの国内外の現代音楽祭に参加し、300を超える作品の音響技術や演奏を手がけ高い評価を得ている。第63回芸術選奨文部科学大臣新人賞芸術振興部門を受賞。2012年より国内外の現代音楽シーンで活躍する演奏家たちと現代音楽アンサンブル「東京現音計画」をスタート、その第1回公演が第13回佐治敬三賞を受賞した。現在、帝塚山学院大学人間科学部准教授。京都市立芸術大学非常勤講師。

Web版 NEW COMPOSER Vol.5

webcomposer

Vol.5  2016.1.19

 お待たせいたしました。Web版『NEW COMPOSER』第5号をお送りいたします。
第5号では〈現音・秋の音楽展2015〉アンデパンダンのレポート、そして2月に開催される「現代の音楽展2016」についてお伝えします。
リアルタイムに更新できるのがWeb版『NEW COMPOSER』の良いところですので、それぞれの演奏会が近づくにつれ、更に記事が更新、増殖していくかも知れません。時々チェックして頂ければ幸いです。
どうぞご覧下さい。

NEW COMPOSER編集室長 山内雅弘

—– C O N T E N T S —–

現音作曲新人賞の講評

現音作曲新人賞本選会を聴いて 

                     審査員長 金子仁美 

 

 第32回現音作曲新人賞本選会は、2015年11月3日に渋谷区文化総合センター大和田6F伝承ホールで開催されました。厳正なる審査の結果、新人賞に川合清裕さん、富樫賞受賞に見澤ゆかりさん、入選に引地誠さん、増田健太さんが選ばれました。おめでとうございます。

 

 今回の課題は、弦楽四重奏と設定されました。何世紀を超えて、多くの作曲家たちがアプローチしてきたこの厳格な編成に、21世紀に生きる新しい世代がどのように挑むか、大きな関心と期待が寄せられました。

 応募は37作品。本年の審査員は山本裕之、鈴木純明両氏と金子仁美の3名で、全応募作品の事前の予見を経て、9月某日、現音事務局からの立会人同席のもと、譜面審査を行いました。譜面審査は、予見を含め、全て名前を伏せて実施されました。審査会では、第一段階としてまず全37作品のそれぞれについて、議論をしました。次に、第二段階として作品の完成度と技術的な質を、第三段階として本選で演奏が可能であるかという点を中心に審査しました。これらすべての段階を通して、作品の個性、表現力について精査することで、一回切りの点数による審査ではなく、何度も議論を重ね、多角的に譜面を見ることに重点を置き、そして最終の段階で投票を行いました。その結果本選に選ばれたのが4作品でした。演奏順に一言ずつコメントを書かせていただきます。

 

引地誠さんの『超流動 -superfluidity-』は、超流動という液体の「不思議な現象」を「弦楽四重奏という厳格な室内楽の編成を通して音楽で具現化することに意義を感じ」(プログラムノートより)、液体の動きの現象を音と音の関係や、音の動きで表現した作品で、細部にまで神経を行き届かせたエクリチュールが曲全体の構築を確かなものにしていました。曲冒頭は聴衆を作品に引き込む力がありましたので、曲全体を通して超流動がより一層多様な形態で表出されると、作品のコンセプトがより明確になったかもしれません。

 

見澤ゆかりさんの『ジャングル – ソナタ~ワルトシュタインへのオマージュ~』は、弦楽器からのさまざまなノイズの探求が印象的な作品ですが、ただノイズを使用したのでなく、人間にとってノイズとはいかなるものなのか、その意味や在り方にも思考を巡らせ、「ソナタ」という伝統的な形式にノイズを落とし入れた点でもユニークな試みでした。「ワルトシュタインへのオマージュのソナタ」ですから見澤さんの計画通りなのだろうとは思いますが、ノイズによる提示部の反復は聴き手にはいささか長かったとも考えられます。

 

川合清裕さんの『アンフォルムII~弦楽四重奏のために~』は、タイトルでもある「アンフォルム」を「〈形態的同一性を成立させない、しかし不定形(アンフォルム)の観念のもと類似している〉という文言に集約できるのではないか、と考えて」構成された作品とプログラムノートにありますが、形式面や音の扱いなどで古典的な色合いが強い中で、音の重ね合わせ方や形状が決して奇抜でない中から独創性を生んでおり、「未聴感」とも言える固有の響きを作り出しているのに耳を奪われました。古典的スタイルを生かすのが川合さんの狙いと解釈した上で、今後は未聴的部分が増すことを大いに期待します。

 

増田建太さんの『史実の花』は、楽器法を駆使した作品で、弦楽四重奏という編成の枠を広げようとする意気込みが譜面からも音からも伝わりました。プログラムノートに「この作品は表面的な性格の開拓ではなく、古来の営みから出る、まるで気付かれない地中の泥のようなある種の気配の表現なのです」と描かれているように、これらの実験的楽器法から奏でられる音は、気付かれずに眠る何かを表現しようとする静かな貪欲さによるものでした。次の展開を期待していたところで作品が閉じられた感があり、もう少し続きを聴きたい欲求が残りました。

 

 本選後の挨拶でもお伝えさせていただきましたが、4作品それぞれが全く違うアプローチで「弦楽四重奏」に挑んでおり、それぞれ完成度も高く、どの作品も魅力がありました。白熱した審査会となったことをご報告します。

 

 なお、演奏は、引地、川合作品を、クァルテット・レオーネの佐原敦子さん(第1ヴァイオリン)、小杉結さん(第2ヴァイオリン)阿部哲さん(ヴィオラ)、豊田庄吾さん(チェロ)が、見澤、増田作品を、甲斐史子さん(第1ヴァイオリン)、松岡麻衣子さん(第2ヴァイオリン)、般若佳子さん(ヴィオラ)、宮坂拡志さん(チェロ) のクァルテットがお引き受け下さいました。演奏の皆様の新曲に向かう真摯な態度のおかげで、作品それぞれの特徴が十分に引き出されました。本選会が、素晴らしい演奏会となったのも演奏の皆様の熱心な取り組みがあってのことです。この場をお借りし、関係者を代表して、お礼申し上げます。

 

 21世紀、弦楽四重奏という歴史ある編成で、日本から新しい表現の発信が出来たことを大変嬉しく思います。