第24回朝日現代音楽賞受賞の言葉〜山澤慧(チェロ)

yamazawakei

第24回朝日現代音楽賞受賞

山澤 慧(チェロ)

この度「第11回現代音楽演奏コンクール“競楽XI”」第1位、ならびに第24回朝日現代音楽賞を受賞することとなり、大変嬉しく思っております。

「競楽」には学生の頃から強い憧れを持っておりました。このコンクールが魅力的である理由の一つは、異種格闘技大会のようなコンクールだからだと思います。国籍や年齢は不問、またあらゆる楽器が参加可能であり、編成も独奏〜六重奏と幅広く選択できます。

課題曲のルールは「1945年以降に作曲された作品を演奏すること」「予選もしくは本選に日本人作品を加えること」の二つです。コンクール応募の際、このルールの中で自分にふさわしいプログラムは何だろうか、という事を考えました。まず予選では何回か演奏した経験もあり、チェロの様々な演奏技法を見せる事ができるマグヌス・リンドベルイ作曲の《ストローク》と、西村朗さんが一昨年作曲された《チェロのためのオード》を演奏することに決めました。《オード》はチェロを存分に歌わせることができる曲だと思い選曲しました。

本選では最も好きな作品の一つであるベルント・アロイス・ツィンマーマンの《無伴奏チェロソナタ》を演奏する事に決めました。ただ、この曲は1960年に書かれた作品で、「現代」音楽演奏コンクールで弾くにはやや古典的すぎるのではないかという不安がありました。そこで、もう少し新しい作品を加えようか迷ったのですが、《無伴奏チェロソナタ》の無から始まり無に終わるような世界観を壊したくないと思い、この1曲のみで勝負することに決めました。結果的にその選曲は間違っていなかったと思います。

自分が演奏会に臨む時、練習段階では一音一音の意味や音の向かうべき方向を考えます。一方、本番では考えすぎずなるべく音楽の自然な流れに任せたいと思っています。ただ、それは今の自分には難しいことでもあります。今回の予選ではまだ余裕もあり、割と自由に弾くことができたのですが、本選では身体も意識も硬くなってしまい音楽の自然な流れをつくれなかったように感じています。そんな中でもなんとか音のもつ意味を表現しようとした、その姿勢を評価してもらえたのではないかと思います。

皆さんが現代音楽を聴くとき、もしかしたらクラシック音楽を聴くときとは違う聴き方をされるかもしれません。ただ、僕自身が演奏するときはその曲がクラシック音楽であっても、現代音楽であっても同じ目標をもって臨んでいます。それは説得力のある演奏をすることです。そのためには楽譜に書かれた音符の意味を追求することが大事だと思っています。課題はまだまだ多くありますが、今回の受賞を励みにこれからも精進したいと思います。

最後に、審査委員の先生方はじめ関係者の皆様、ご指導して下さった先生方、今日まで支えて下さった皆様に感謝申し上げます。

 

▼山澤 慧(やまざわ けい)
東京都町田市出身。東京芸術大学附属高校、同大学を経て、同大学院を修了。第10回ビバホールチェロコンクール第3位。第2回秋吉台音楽コンクールチェロ部門第1位。音川健二、藤沢俊樹、河野文昭、西谷牧人、鈴木秀美、山崎伸子の各氏に師事。チェロアンサンブルXTC、Tokyo Ensemnable Factory、アンサンブル室町、音楽集団”渦々”メンバー。芸大フィルハーモニア首席チェロ奏者。