アンデパンダン展参加レポート② 


                            アンデパンダン展第1夜出品:田口雅英

数年ぶりに現音アンデパンダン展第1夜に作品を出品し、参加した。以前に参加した際もそうだったが、多くの方が聞きに来られていて、現音のコンサートに期待して下さる聴衆が確実に存在することを改めて実感した。

私の作品、バリトンとピアノの為の「ダバオ・タモガンの地獄」に関しては、作品の完成が大変遅くなってしまったのにもかかわらず最終的に素晴らしい演奏に仕上げて下さった、松平敬氏(バリトン)、清水友美氏(ピアノ)のお二人に、おおいに感謝している。演奏終了後に暖かい拍手を頂いた聴衆の皆様にも、感謝申し上げたい。

実際の演奏を通じて課題もいろいろと発見することができ、また終演後にご指摘下さった方もいた。今後の活動にいかしていきたい。

作品の背景には、戦前のフィリピン南部のダバオにおける日本人移民の歴史がある。(1941年頃には約2万人が住んでいたと言われている。)現在のフィリピン大統領ロドリゴ・ドゥテルテ氏が長年このダバオの市長を勤めていたこともあり、彼の就任直後や初来日の頃には、マスコミで日本人移民の歴史が紹介されることもあった。

だが残念ながら、多くの苦難を乗り越えて土地を開拓し今日のダバオ市の基盤を作った日本人移民の努力や、戦争に巻き込まれ悲惨な体験をした彼らや現地のフィリピン人住民の苦悩は、現在の日本では忘れ去られてしまっている。

作品の歌詞には、ダバオの日本人移民家庭に生まれ、小学生時代に現地の悲惨な戦争を体験された故紺野彰氏の歌集「ダバオ・タモガンの地獄 Putangina」から選んだ数首の短歌を用いた。氏の短歌には、実際に体験した悲惨な戦争の実態が、生々しく描写されている。

この素晴らしい歌集と出合う事の出来た幸運と、短歌への作曲を許可して下さった故紺野氏の奥様に、ただただ感謝するのみである。

2016年に14年ぶりにダバオに滞在し、戦争の時代の記憶をもとに、現地のフィリピン人日系人会インターナショナルスクールの学生とワークショップを通じて作品を共同で作り演奏する、というプロジェクトを行った。その際、現地に残る日系人、日本軍と戦った旧フィリピンゲリラ兵、日本人が近くに住んでいたという方、日本軍に親族を殺された方など、いろいろな方にお話を聞くことができ、それらの話は私に強烈な印象を残した。

今回のアンデパンダン展の作品も、その際の経験がなければ、そもそも作曲に至らなかったであろう。

今後もこうしたダバオの歴史や戦争に焦点を当てた作品を、幾つか作りたいと思っている。戦争の記憶の風化が進む昨今、それらの作品がきっかけとなり、少しでも戦争の実体がどのようなものであったのか考えて下さる方が増えれば、幸いである。

今回は諸事情により、あまり他の方の作品を聞くことができなかった。しっかりと聞くことができたのは、宇野文夫氏のピアノ曲「破片II」と高原宏文氏の弦楽四重奏曲「手鑑」の2曲のみであった。宇野氏の作品には、ピアノの各音域を縦横無尽に使い切るヴィルトィオーゾ的な部分に、高原氏の作品には、じっくりと語っていく楽想の展開に、それぞれ魅力を感じた。

以前から存じ上げていてお話ししたこともある作曲家を除けば、今回は高原氏、ロクリアン正岡氏、桃井千津子氏と少しお話しすることができた。出品者の一人としては、こうしていろいろなタイプの作曲家と交流できるのも、アンデパンダン展の魅力のひとつであろう。

聴衆側には、いろいろなタイプの作品を聞いて頂くことができるという魅力はある。その魅力をどのように提示すればよりコンサートして面白いものになるか、現音ではいろいろと改革・試行錯誤が続いているようだ。時々参加させて頂いている者として、なにか案が出せないか考えたい。