“競楽XI”審査委員特別奨励賞受賞の言葉〜川村恵里佳(ピアノ)


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“競楽XI”審査委員特別奨励賞受賞

川村 恵里佳(ピアノ)

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審査委員特別奨励賞の発表を受ける川村恵里佳さん(中央)

この度は「第11回現代音楽演奏コンクール“競楽XI”」本選にて審査委員特別奨励賞を頂き、大変光栄に思っております。この歴史あるコンクールの本選の舞台で、素晴らしいファイナリストの方々と共に演奏出来たということ自体が、今の私にとっては信じられないくらいの幸運でした。その上、まさかこのような賞まで頂けるとは思っておらず、発表を聞いたときは驚きのあまり少し固まりましたが、実感が湧いてくるにつれ嬉しさがこみ上げてきました。

正直に申し上げますと私はコンクールという場が少々苦手で、中学生の頃以来ひとつも受けていませんでした。しかしこの“競楽”は通常のコンクールとは全く異なり「1945年以降の作品であれば楽器・編成自由のセルフプロデュースコンクール」というスタイルのもので、とにかく「面白そう!」という好奇心から挑戦を考え始めました。予選では12分、本選では20分の時間を自由に使うことが出来るので、何を弾こうか夏の間ずっと考えましたが、最終的には、リスクを恐れずに、今の自分が心から表現したいと思う楽曲—最も興味を持っている作曲家のひとりであるエリオット・カーターの作品2曲と、心から敬愛する武満徹の名作《雨の樹 素描》シリーズ2曲を演奏することとしました。

カーターは非常に長い年代に渡って作品を残し続けた作曲家で、予選で演奏したソナタは1945-46年作曲、本選で演奏した《ピアノについての2つの考察》は2005-06年作曲と、その作曲年代には60年もの開きがあります。それぞれ、作曲された時代の世相を映し出している面もあれば、時を経ても変わらない作曲家の確固たる個性もあり、両方を演奏することで見えてくるものがあるのではないかという考えから選曲しました。武満徹の《雨の樹 素描》シリーズは、現代のピアノ作品の中でも演奏される機会が多く、よく知られている作品だけにリスキーな選曲かと思いましたが、それでもこの曲の奇跡的なほどの美しさと深さに魅了され、どうしても弾きたいという気持ちを抑えることができませんでした。

しかし、予選・本選とも自分にとって音楽的にも技術的にも高いハードルのある選曲だったので、準備の段階でも本番でも極限までの集中が要求され、なかなか大変でした。2回の本番では、たとえ完璧に弾けなくとも、舞台上で自分自身の率直な言葉で何かを言ってこようと演奏前に決意して臨みました。まだまだ未熟な面の多い演奏にはなってしまいましたが、それでも今の自分なりの音楽を出し切ることは出来たのではないかと感じました。その結果、審査委員特別奨励賞という評価を頂けたことを、心から嬉しく思います。

予選、本選ともに自分が弾き終わったあとは他の参加者の方々の演奏を聴かせて頂き、一聴衆として存分に楽しむとともに、勉強させて頂くことが本当に多くありました。今回の自分の経験と、他の素晴らしい演奏者の方々から受けた刺激を糧に、これからも音楽家として成長出来ますよう精進していきたいと思います。最後に、このコンクールに際してお世話になった沢山の方々—審査委員の先生方やスタッフの皆様、聴衆の皆様、支えて下さった先生や家族、友人達に心からの感謝を申し上げます。

 

▼川村 恵里佳(かわむら えりか)
1991年神奈川県生まれ。東京音楽大学音楽学部器楽専攻(ピアノ演奏家コース)卒業。在学中、学内オーディション合格者によるソロ・室内楽定期演奏会において室内楽部門に出演、及び、作曲部門にて自作曲を発表。現在、同大学院音楽研究科修士課程鍵盤楽器研究領域(伴奏)に在籍し、ピアノ及び作曲を土田英介氏に師事。またピアノを播本枝末子、石井克典、山洞智の各氏に師事。