〈現音・特別音楽展2011 新しい音楽のカタチ 軌跡と未来—2daysコンサート〉 実行報告

〈現音・特別音楽展2011 新しい音楽のカタチ 軌跡と未来—2daysコンサート〉 実行報告
松尾祐孝(創立80周年記念実行委員長)

2011年度と2012年度の二年間にわたる創立80周年記念事業が、ようやく完遂されようとしています。この原稿を皆さんがお読みになる頃には、記念事業全公演の最後を飾る京都開催の演奏会<宮本妥子パーカッションリサイタル>の熱狂が、グランド・フナーレを飾っていることでしょう。

さて、去る1月21日(土)と22日(日)の二日間にわたって、創立80周年記念事業の首都圏公演のフィナーレとなるミニ音楽祭=〈現音・特別音楽展2011 新しい音楽のカタチ〜軌跡と未来 2daysコンサート〉を開催しました。例年以上に厳しい寒波が居座る天候の中でしたが、浜離宮朝日ホールを拠点としての開催は、現音としてはまずまずの動員を全てのコンサートで得ることができました。滅多に生演奏で聴くことのできない曲を多く含んだ内外の作曲家のアンソロジー作品によって、現代音楽シーンの軌跡を振り返りながら、会員諸氏の作品や一般公募作品の発表によって未来を紡ぎながら、人間が新しい創造作品を世に問うという根源的な営みの継続の重要性と当協会の存在を社会に広くアピールする、貴重な機会になりました。

初日=21日の最初の演奏会=「室内楽 I —winds—」(制作担当:安良岡章夫)は、難曲シュトックハウゼン《ツァイトマッセ》(指揮:中川賢一)による幕開けでいきなりヴォルテージを挙げました。2011年度の室内オーケストラ演奏会を期に旗揚げしたばかりの当協会レジデント室内オーケストラ=JSCMユース・チェンバー・オーケストラの管楽器メンバーを主体として、演奏面でも充実した内容で、一気に開催の雰囲気が盛り上がりました。

続く「コンピュータ・ミュージック」(制作担当:莱孝之)は、小ホールを満員にして熱いイベントになりました。エレクトロニクス公演につきもののトラブルもほとんど無く、映像を盛り込んだ作品も含めて、充実した作品と演奏が聴衆の目と耳を釘付けにした2時間でした。

初日の夜公演「ヴォーカル・アンサンブル」(制作担当:鈴木純明)は、録音音源再生を伴う作品以外は、伴奏楽器や協演楽器も一切登場しない、文字通りのヴォーカルによる音楽の創造の場となりました。西川竜太指揮/ヴォクスマーナが、多彩多様な作品の個性を浮き彫りにする秀演を繰り広げました。

2日目の午前中には、チラシには掲載しませんでしたが、現代音楽教育プログラム研究部会主導の聴衆参加型ワークショップ<WSLの会>特別編〜「音楽づくり」って名に!?(ワークショップ・リーダー:松尾祐孝)を実施しました。意欲的な一般参加者や音大生を交えて、2時間弱で創造的な音楽ステージを集団創作することができました。

昼からの「ピアノ・デュオ」(制作担当:金子仁美)は、長いコンサートになりましたが、ピアノデュオ・ドゥオール(藤井隆史&白水芳枝)と瀬尾久仁&加藤真一郎ピアノ・デュオの2組の出演者のそれぞれの作品の個性を浮き彫りにして、聴き応え充分の内容になりました。

続いて小ホールに移って、「ボーナス・コンサート」(制作担当:露木正登)というこの浜離宮2daysの特別趣向による演奏会を挿入。ケージの難曲《フリーマン・エチュード》全曲を、世界で数人目となる全曲一括生演奏となったvn:辺見康孝氏の演奏によって一気に聴くことができる貴重な機会となりました。

再び音楽ホールに戻って、夕方の「室内楽II—strings—」(制作担当:坪能克裕・松尾祐孝)が、言わばファイナル・コンサート。ここでは、JSCMユース・チェンバー・オーケストラの弦楽器とピアノのメンバーが活躍して、プリペアード・ピアノの響きの新鮮さが今日でも輝きを失わない黛敏郎作品や会員諸氏の意欲作が相互触発を放射しました。そして最後に「日本現代音楽協会会員80人のワンアタック素材による80周年記念作品」(企画・制作:松平頼曉/ピアノ演奏:中川俊郎)の初演によってミニ音楽祭の幕を閉じました。終演後は、ホール近くのレストランでの現音恒例の「現音・新年パーティ」を兼ねたレセプションに場を移して、和やかな交流のひとときを持つことができました。

この音楽祭の開催に際しては、関係各団体からの貴重な助成・後援・協力をいただきましたが、とりわけ会場使用の便宜を含めて共催までお引き受けいただいた朝日新聞社の多大な協力に対して、ここであらためて感謝の意を表したいと思います。また、協会内の企画策定や開催遂行については、準備委員会に始まり企画委員会を経て実行委員会まで、年度毎に検討内容に即してメンバーを入れ替えながら、多くの理事や会員の知恵と力を結集してきました。今までの現音の企画策定とは一味違った体制をとることができたと考えています。アンソロジー作品を含めたプログラミングも、こういった新機軸の中から浮上して実現したものです。企画・制作・演奏参加・出品参加・聴衆参加等々、関っていただいた全ての皆様と膨大な業務を遂行していただいた事務局の皆さんに厚く御礼を申し上げて、本稿の筆を置きます。ありがとうございました。