福士則夫のチビテッラ日記〜第13回最終回〜

●第13回最終回「さようなら」

テントの下、最後の晩餐

テントの下、最後の晩餐

ディレクターのダーナ、お世話になりました

ディレクターのダーナ、お世話になりました

7月25日(金)は卒業式。このセッションは60日間4期に分かれていて、4月に始まり10月末まで延べ毎年30人ほどの芸術家が招聘され我々は2期目に当たる。時期としては4期の中で最も良い季節かもしれない。城の鐘の音を合図にディレクターであるダーナの家の庭先で城のスタッフも全員参加するレセプションが始まる。

夕食後はスカラベオと呼ばれている3階の談話室で証書を受け取るのだがその後に3~5分のプレゼンがある。こんな話は佐藤聰明君から聞いていないが今年から始まった儀式なのだろうか。仕方がないので出来たての合唱作品の下書きを見せ、城をスケッチした絵を見せ、最後にデーヴィー直伝のなんでも顔に貼り付ける芸当で腕時計を使ってマジシャンもどきにオデコに貼り付けたらこれが受けた、何が幸いするかわからない。

26日はベスとデーヴィーの奥さんとクラリネット二重奏のミニコンサートがあり、夕食前の演奏を夕食後と聞きちがえて残念がったら、デーヴィーが動画で一部をメールしてくれた。夕食後、ダーラと奥さんの幸江さんを招待する。日本から持参したカキピーとサキイカはどちらもダーラが好物らしく、どんどん食べて無くなっていくのが気持ちよかった。結局は食べる機会のなかったチキンラーメン、サトウのレンジで温める米と、レトルトカレーのこくまろ、醤油、ソースを彼らにプレゼント。ダーラは日本食も車も大好きでもちろんスカイラインGTRも知っていたが、彼が現在住んでいるベルリンでは最低速度225キロの道路もあるとか。思わず聞き直したのであるがカード一枚で簡単に車が借りられるので今度一緒に走ろうという話しに食指が動く。近々沖縄でダーラのインスタレーションが行われるそうで日本での再会を約する。

ゲストのそれぞれが奥さんや旦那を迎えてパーティーで盛り上がった翌日は彼らとの別れである。この小さな町から続けて次の招待地に向かう猛者もいる。フランス語で度々話しかけてくれたジェシカも去り今日はジョーとの別れ。彼女の詩はエルトン・ジョンも歌っていてイギリスではかなり著名な詩人らしい。図書館員と思われる物知りの旦那共々避暑地に移動するとかで途中までディエゴの車に同乗し、駅で別れる時に自分のCDを記念に渡す。素敵な声で「鱒」を歌ってくれたジョー、さようなら。

ペルージャの町に戻り自分も1か月半前に降り立ったバス停にカミさんと長女を出迎える。別れと再会が重なる一日であった。城に戻る車窓は金色に輝き、ところどころに干し草が綺麗に丸くまかれて丘の斜面にポツポツと止まっている。明日もきっと天気に違いない。

暮れ行くチビテッラ城

暮れ行くチビテッラ城

★次回は編集後記を特別掲載!

全13回に亘る「福士則夫のチビテッラ日記」をご愛読下さりありがとうございました! 次回は特別企画として、執筆を終えた福士則夫会員による編集後記をお届けします。なんとイタリア滞在中に福士会員自ら描いた水彩画も登場!

更新は11月2日(水)です。お楽しみに!