アンデパンダンレポート

現音・秋の音楽展2015 アンデパンダン展を振り返って

                                                                                                           制作担当者代表 露木正登

 

2015年11月18日(水)と19日(木)にわたって開催された現音・秋の音楽展2015「アンデパンダン展」は、集客の面でも演奏会の内容の充実という面でも一応の成果が得られたと思う。出品曲は第1夜が8作品、第2夜が9作品で、一夜のコンサートとしては曲数が多かったにも関わらず、ゲネプロ・本番ともに進行上の大きな混乱が生ずることもなく、コンサートの終演時間も21時を回らなかったことは成功だったと言ってよい。現音事務局をはじめスタッフ諸氏の尽力があっての成功であり、制作担当を代表して感謝したい。また、コンサートを成功させるためには出品曲の充実が必須であり、力作をお寄せいただいた出品作曲家にも御礼申し上げたい。

 

ここでは「アンデパンダン展」全2夜の総括として、今年の募集要項から以前と大きく変わった部分「新作であること」「ひとり1曲12分以内」ということについて、どうしてそのようなコンセプトに至ったのか、その経緯を書かせていただく。

  • 「新作であること」について

会員の自由出品によるアンデパンダン展に関しては、以前から「コンサートとしての統一感や方向性がわからない」という批判があった。「コンサートとして何らかの方向性や統一感を示した方がいいのではないか」「何かしらの縛りが必要なのではないか」という声を受けて、制作担当者である露木、森田、橋本の3人でアンデパンダン展の在り方について議論した。

今日、現代音楽の在り方は多様である。したがって作曲家の作風によって縛ることは不可能であり、無審査で出品できるアンデパンダン展の精神に反する、ということで3人の意見は一致した。では、今まで通りに何も縛りがなくていいのか? となるとそうではない。やはり批判に対しては何らかの改善を示さなければならない。

現音のコンサートには春に開催される「現代の音楽展」と「秋の音楽展」があるが、「現代の音楽展」の方はいわば企画展であり、企画の内容や方向性に沿った作品が求められるため、選曲される作品の作風や傾向はある程度決まってしまう。しかし、「秋の音楽展」の目玉企画である「アンデパンダン展」は会員の自由出品が特徴であり、無審査で組まれるプログラムには多様な作風をもった会員作曲家たちが並ぶ。少々大げさだが、現音会員作曲家の「いま」を聴くコンサートであると言ってもいい。そこで、「アンデパンダン展に足を運べば会員作曲家の最新の曲を聴くことができる」というのをコンサートの「売り」にできないか、と考えた。アンデパンダン展に出品するための唯一の条件が「新作である」という縛りならば、作風などの傾向で縛るよりは抵抗が少ないであろうと思われた。確かにこれまでのアンデパンダン展は、それこそ10年以上も前の曲を出品される作曲家もいて、最新作から昔の曲までが無造作に並んでいるコンサートという印象だった。アンデパンダン展を「現音会員の新作展である」と明確に位置付ければ、より社会に対してコンサートの意義をアピールできるかもしれない、と考えた。ただ、「新作である」という定義について、作曲時期にどの程度の幅を設けるかについてはいろいろと議論を尽くした。今日の時代の流れ、時間の流れのスピードはものすごく早く、一年前の情報ですら古いものとなってしまう感覚があることから、「開催年から2年前までに書かれた作品を新作」と扱うのが妥当であろうという結論に達した。

  • 「ひとり1曲12分以内」について

アンデパンダン展は現音の企画の中では非常に人気が高く、16曲程度の募集枠に対して、出品希望者が毎年20名程度は集まるほどの活況を呈している。しかし、一夜のコンサートで演奏可能な曲数は限られており、コンサートの回数も2夜開催が限度である。開演時間も、どんなに早めても18時30分開演がギリギリの線であろう。募集要項には「先着順など出品者の調整もあり得る」ことは書かれているが、会員作曲家のバラエティーさ、多様さを聴衆に知ってもらうためにも、できるだけ多くの作曲家が出品参加できる方がいい。

ここ数年、アンデパンダン展の終演時間が21時を超すほど長大化しているが、その状況をどう改善するか? と同時に、開催2夜分の曲数枠を超える参加希望者を、どうすれば全員参加させることができるか?

その結論としては、ひとりの作曲家の持ち時間をこれまでの15分以内から12分以内に短くして、ひとりでも多くの作曲家に出品参加してもらえるようにするしかない。議論の中では当初、「ひとり10分以内」ということも話題に上ったが、今回は「12分以内」が妥当であろうと結論した。持ち時間を15分以内から12分以内にしたことに対して一部から批判があったと聞くが、現音会員であれば皆、アンデパンダン展に出品する権利をもっており、作曲家のモチベーションを考えると「募集枠から外れた人は来年度に回す」という対処法は望ましくない。もし、アンデパンダン展を3夜開催できるとすれば、それが一番の解決法なのであるが、いまの現音の財政状況からすればそれが可能なだけの経済的体力はない。2夜という限られた枠の中で出品希望者を全員参加させようとすれば、ひとりの作曲家の持ち時間を削ることしか対処する方法がない。

また、9曲も新作が並んだプログラムを、聴衆にできるだけ負担をかけずに聴いてもらうためには2度の休憩は必須であり、休憩時間も最低15分は確保したいところである。休憩時間を切り詰めることは、作品を聴く集中力や曲の印象にも影響するから、制作としては聴衆に負担をかけないように工夫するのは当然のことだと考える。

今回、「ひとり12分以内」という持ち時間を厳守することを徹底したため、著しく時間超過した曲もなく、コンサート全体が弛緩することなくスムーズに進行したことは大きな成果であった。

今後、アンデパンダン展への出品希望者が増加する場合、たとえば出品希望者を募る段階では持ち時間を発表せず、参加希望者の募集を締め切った後、参加人数が把握できたところで持ち時間を決定する、などという対策を講じていく必要があるかもしれない。

  • プロ意識をもつこと

現音はプロ作曲家の集団だから、与えられた時間枠の中で自己の音楽表現を完結するのがプロの仕事ではないのか?と思う。たとえ「5分以内の曲」という極端な条件が示されたとしても、その時間枠にふさわしい音楽表現を聴かせるのがプロの仕事であり、「15分なければ曲が書けない」という姿勢はアマチュアリズムでしかない。出品希望者には、ぜひ高いプロ意識を持って参加してほしいと期待したいところである。

アンデパンダン展に出品することは、会員に等しく認められた権利である以上、参加希望人数によっては1曲の制限時間を短くすることもあり得る、ということは、参加希望者にはぜひとも理解していただきたいと思う。そして、この件に不満の方はただ批判するだけではなく、この問題をどうすれば解決できるかを具体的に提案していただきたいと願ってやまない。