現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介〜マクイーン時田 深山(十七絃箏)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介
マクイーン時田 深山(十七絃箏)Miyama MCQUEEN-TOKITA

▼本選演奏曲
高橋悠治/橋をわたって(1984)

 

私は4年近く前にオーストラリアから東京に引っ越してきました。オーストラリアではほとんど他の箏奏者はいなく、レッスンのために飛行機に乗らないといけない状況でした。東京に来たのは、邦楽の現場で他の奏者とふれあい、日本でしか学べない事や見れないこと、聴けないことに触れて、自分の音楽に磨きをかけるためでした。
日本に来て色々な場で演奏して、その中で箏曲や邦楽専用のコンクールにも出場してきましたが、思ったよりも、海外と同じように日本でも箏は演奏者や作曲者に特別視されていることがまだあるということに気づきました。今回「競楽」のコンクールで、他の西洋楽器と並んで、ただ現代曲を表現する楽器として箏で出場して演奏できることをとてもうれしく思っています。それだけでなく、立派な世代の審査員の先生方に演奏をみていただけるということも、大変貴重な経験だと思っています。
今回本選で演奏させていただく曲《橋をわたって》は、何年も前からオーストラリアで聴いていました。私の師匠の師匠にあたる沢井一恵先生の高橋悠治氏への委嘱作品ばかりのアルバムの中の一曲で、大好きな曲でした。でもその時学生だった私は、まさかこんな爪をつけずに素手で激しく十七絃の曲を私が、しかも日本で演奏する日がくるとは思いませんでした。今でも大好きな《橋をわたって》、精魂込めてお届けしたいと思います。

◎プロフィール
7歳から筝を学び、メルボルンとシドニーで小田村さつきに、東京で沢井一恵に師事。2008年インド映画「The Japanese Wife(日本人の妻)」の音楽で、箏と歌を担当。2008年にモナシュ大学音楽学部及び文学部卒業以来、日本に活動の拠点を移す。NHK邦楽技能者育成会第55期首席卒業。沢井箏曲院教師。現在文部科学省奨学金により、東京芸術大学院音楽研究科所属。第15回賢順記念箏曲コンクール奨励賞受賞。第7回ルーマニア国際音楽コンクール室内楽部門1位・日本ルーマニア音楽協会理事会賞・オーディエンス賞受賞。

 

▼第一次予選演奏曲
高橋悠治/橋をわたって(1984)

▼第二次予選演奏曲
松村禎三/幻想曲(1980)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介〜木埜下 大祐(フルート)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介
木埜下 大祐(フルート)Daiske KINO-SHITA

▼本選演奏曲
佐原洸/パラジウム(2012)*ピアノ伴奏付き

 

皆様こんにちは。フルートの木埜下です。今回私が演奏する佐原洸の《Palladium》は今年初演された新しい作品ですが、音楽性と、新しい技術(例えば、フラッタータンギングと指を合わせる、など)が見事に融合したとてもユニークな曲です。さまざまな音響と音楽が必然性をもって一体化していく様子を楽しんでいただければと思います。

◎プロフィール
1977年金沢市生まれ。洗足学園魚津短期大学、同研究科、桐朋オーケストラアカデミー、ハンブルク音楽院(石川県芸術インターンシップ在外研修員)、ブレーメン芸術大学を卒業、修了。これまでフルートを小泉浩、ユルゲン・フランツ、ハリー・シュタッレフェルト、ヘレン・ブレットソー、マリオ・カローリの各氏に師事。グイヤンシンフォニーオーケストラ首席フルート奏者を務めた後、ソリストに転出、現代音楽を中心に幅広いジャンルで活躍している。現代音楽演奏コンクール競楽に4度の入選(内2度の審査委員特別賞)の他、入賞多数。現在、アジア同時代音楽協会(ADOK)会長、平成24年度トーキョーワンダーサイト国内交流クリエーター、福山平成大学非常勤講師。
▼第一次予選演奏曲
武満徹/ヴォイス(1971)

▼第二次予選演奏曲
Brian FERNEYHOUGH/カサンドラの夢の歌(1970)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介〜佐藤 祐介(ピアノ)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介
佐藤 祐介(ピアノ)Yusuke SATO

▼本選演奏曲
権代敦彦/無常の鐘 ピアノのための(2009)
鈴木純明/”Impromptu” pour piano solo(2007)

William BOLCOM/Nine Bagatelles(1996)

 

一般的に、ピアノの分野では現代音楽は特別なカテゴリーに捉えられている場合が多いと思います。

たしかに現代音楽はアカデミックかつ難解な作品が多いことは否めません。
しかし私は、多少表現の形は違えど、バロックやクラシックなどの慣れ親しんだ音楽の延長線上にあるものだと思っています。なので、この「競楽」でも、ごく普通に私自身の音楽を表現するために、現代音楽という台本を借り、バッハやシューベルトなどの名曲を演奏する時となんら変わらない気持ちで予選のプログラムを演奏しました。
その結果、ファイナリストになることができ光栄に思います。
本選会では、三人の個性的な作曲家達の作品を自分自身の言葉で表現したいと思います。

◎プロフィール
福島県出身。12歳よりピアノを始め、15歳でデビューリサイタルを開催。UFAM国際音楽コンクール第2位、三善晃ピアノコンクール、チェコ音楽コンクール第1位。第15回浜松国際ピアノアカデミーにおいて、中村紘子等のマスタークラスを受講。昭和音楽大学コンチェルト定期演奏会のソリストに選抜されプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番作品16を演奏。現在、大森ひろみに師事。これまで、故安藤友候、江口文子、杉谷昭子、平間百合子、藤原由紀乃、本尾かおる、柳川守に師事。

 

▼第一次予選演奏曲
Einojuhani RAUTAVAARA/Piano Sonata No.2 “The fire sermon” op.54

▼第二次予選演奏曲
Henry MARTIN/24 Preludes and Fugues No.3 D♭major(1990)
権代敦彦/無常の鐘 ピアノのための(2009)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介〜原田 真帆(ヴァイオリン)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介
原田 真帆(ヴァイオリン)Maho HARADA

▼本選演奏曲
松下功/ヴァイオリン・ソロのための「マントラ」(2001)

 

本選で演奏いたします『マントラ』は、わたしの師匠である澤先生が初演した曲です。序-破-急の3つの部分からなる曲に合わせ、舞台には5台の譜面台が3種類の奥行きで配置されます。奏者はヴァイオリンを弾きながら歩いて移動し、すべての譜面台と向き合い、最後にはそれらに囲まれて弾きます。
この曲は空海が大陸から持ち帰った密教の修法「護摩業」をもとに作られています。護摩業は燃えたぎる炎を前にして真言(仏の言葉)を唱え続ける厳しい修行で、炎の温度は300度にも及ぶそうです。マントラとはサンスクリット語で讃歌・呪文といった意味で真言のことを指し、ここでは不動明王の真言をリズム・モティーフとして、煩悩の数と同じ108回刻まれます。
人生の長く苦しい時間の中で、一瞬でも苦悩から逃れたい──。そんな祈りが込められた『マントラ』。自分の心と誠実に向き合って、今のわたしなりの真言を見つけたいと思います。
今回演奏するにあたり、お話を聞かせてくださった松下先生、ご指導くださった澤先生に感謝いたします。

◎プロフィール
栃木県生まれ。3歳よりヴァイオリンを始める。2012年3月東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を卒業、現在同大学器楽科1年在学中。澤和樹氏に師事。

 

▼第一次予選演奏曲
池辺晋一郎/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1・2楽章(1965)

▼第二次予選演奏曲
Witold Lutosławski/Partita/パルティータ(1984)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介〜安田 結衣子(ピアノ)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介
安田 結衣子(ピアノ)Yuiko YASUDA


▼本選演奏曲
Oliver KNUSSEN/Variations for piano op.24(1989)
Pierre BOULEZ/Incises pour piano(1994, Version 2001)

 

長い間目標にしていた競楽の本選にこの度出場できること、そして予選本選を通して私の大好きな作品たちを演奏させていただけることを大変嬉しく思っています。
本選で一曲目に演奏いたしますナッセンの《ヴァリエーションop.24》は、主題と12の変奏で構成されており、ピアノの魅力が存分に引き出された美しい作品です。
二曲目のブーレーズ《アンシーズ》は1994年の作曲後2001年に改訂された作品で、緊張感に包まれた冒頭に続き、低音が鳴り響く静と鋭いリズムが狂ったように舞う動の部分が繰り返されます。
この二曲から受けた感銘と刺激を舞台で皆様にお伝えできるように演奏したいと思います。

◎プロフィール
京都市立音楽高等学校、東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。同大学卒業時にアカン サス賞受賞。2007年、パリ国立高等音楽院ピアノ伴奏科に審査員の満場一致で入学、2010年同 音楽院を最優秀の成績で卒業。 作曲を小鍛冶邦隆、松尾祐孝、ピアノを故J.Koerner、J.F.Neuburgerの各氏に師事。 現在東京藝術大学音楽学部、上野学園大学、桐朋学園大学音楽学部付属子どものた めの音楽教室非常勤講師。

 

▼第一次予選演奏曲
坂田直樹/Hidden Colors (2007)
Henri DUTILLEUX/Trois preludes pour piano より II. Sur un meme accord (1977)

▼第二次予選演奏曲
Pascal DUSAPIN/Etudes pour piano No.4 (1999)
Henri DUTILLEUX/Trois preludes pour piano より III. Lejeu des contraires (1988)