ISCM世界音楽の日々2016トンヨン大会報告〜嶋津武仁

Ensemble 2e2mと指揮のPierre Roullier
(中央)2016.4.1, Black Box/Tongyeong

Ensemble 2e2mと指揮のPierre Roullier
(中央)2016.4.1, Black Box/Tongyeong

 

報告 嶋津武仁
日本現代音楽協会(国際現代音楽協会日本支部)会員/福島大学名誉教授

 

今年のISCM「世界音楽の日々(World Music Days)」は、韓国、トンヨン(統営)市において、3月28日から4月1日、開催された。

統営(トンヨン)市は、釜山(プサン)から西に車で高速道路を1時間半ほどのところにある港町。歴史的には秀吉による「文禄・慶長の役」の戦場となり、町の名前もその野営地に由来しているようである。東京から2時間余で着く、日本には大変近い開催都市だったといっていいだろう。

この人口15万ほどの地方都市では、毎年、「トンヨン国際音楽祭」TIMFが開催され、今年のISCMもその一環で、この音楽祭と並行的に開催された。トンヨン市は、韓国出身の作曲家、尹伊桑(イサン・ユン)の生まれた町で、この音楽祭も、彼へのメモリアルを兼ねたものという。

ISCMの「世界音楽の日々」には、29日より参加し、最終コンサートの翌日まで、同市に滞在した。他にISCM日本支部(日本現代音楽協会)推薦ではない日本人の作品が2曲(松下功作曲《Prayer of the Firmament》、福田拓人作曲《Beyond the eternal chaos for Flute and Electronics》)演奏されたが、2日間参加の遅れと、自作品のリハによって、それらには立ち会えことができなかった。また、日本支部の正代表でもなかったため、期間中に行われた代表者の会議でどのようなことが話し合われたかも分からなかった。

開催国、韓国の若い作曲家の作品を多く聴くことができたが、いわゆるポストモダン風の「現代音楽」といった感じで、強く印象に残る作品は、ほとんどなかったように思う。演奏家は、トンヨン市のアンサンブルやオーケストラなど、大変質のよい演奏を展開し、海外の演奏家として、日本から「オーケストラ・アンサンブル金沢」、フランスから「アンサンブル2e2m」がそれぞれ、「世界音楽の日々」の最初と最後のプログラムに配置され、その間に、12のコンサートのほか、インスタレーションの作品の設置やワークショップ、更にはTIMFのコンサートも行われ、ISCMは久しぶり(1993年メキシコシティー大会以来)の参加であったが、たっぷりと音楽を楽しむことができた。音楽環境も作品の内容や演奏の規模に応じて、3つの音響のよい、整ったホールが使用され、贅沢な内容の音楽祭を呈していた。コンサートの合間には、イギリスやアメリカ、フランス、韓国などいくつかの支部が会食パーティを設定し、多くの旧知の作曲家や演奏家と親しく旧交を温めたり、多くの音楽家たちと交流することもできた。

左からISCM韓国支部会長 Seungwoo Paik(大会会長)、嶋津武仁(韓国支部主催会食会にて/2016.3.31)

左からISCM韓国支部会長 Seungwoo Paik(大会会長)、嶋津武仁(韓国支部主催会食会にて/2016.3.31)

韓国のオーガナイズのスタッフは、海外からの参加者一人ひとりに対し、ホテルと会場や釜山の空港までも送迎をしてくれるなど、大変精力的に対応してくれたが、その一方、リハーサル時間など、スケジューリングが作曲家に伝わらないことが多く、大変閉口した。このままでは、演奏もおぼつかないと感じた拙作《Requiem for Nature》も、なんとか最終日(4月1日)、結局、最終作品として演奏された。コンサート直前で順番が決まった(変更された?)ようである。ただ、フランスのアンサンブル(指揮:Pierre Roullier
)は、見事な演奏をし、ドイツで勉強した韓国のバリトン歌手(Hyuk Lee)も、苦労しつつも、満足のいく演奏をしてくれた。コンサートには90歳になるイサン・ユン夫人もわざわざ来場していただき、大変思い出になるコンサートにもなった。

コンサートの翌日、帰国のために釜山の空港に向かう道路に沿って、数十キロと続く、満開となった桜の並木のみごとさも、強い残像として残っている。